32年ぶり“ジャイアントキリング”起こした東北大OBの今 大学野球の「成功体験」を人生に生かす
小池さんが3年秋の仙台大戦を機に自らベンチを外れた際は、小池さんの言動が「周りに良い影響を及ばさない」と考えて本人に直接注意した。「相棒」だった二人の関係は、約3か月間、互いに口を利かなくなるほど悪化。そうなると分かっていても注意したのは、新チームから投手リーダーを務める自覚があったからだ。 結果的に思いは伝わり、二人の関係は自然と修復。最後の1年は二枚看板がフル回転してチームを支えた。今では「何度も嫌になった野球を続けられたのは瀬戸のおかげ。瀬戸なしでは4年間やれなかった」(小池さん)、「自分が負けても小池が勝ってくれて、また投げる機会をもらえた。小池に助けられた」(瀬戸さん)と感謝し合っている。野球にも勉強にも、本気で向き合った4年間だった。
限られた時間の中で味わう「達成感」
国立大で野球を続けるか悩む高校生も少なくないはず。三人に国立大や東北大で野球をすることの良さを聞いてみた。 「練習環境や時間の面で不利というか、勝てない理由付けになる部分はあるけど、だからこそ、その条件で勝てば評価される。実際に福祉大に勝った時は注目されましたし、環境が整っていなくても勝てるというところを見せてこそ味わえる達成感がありました」と畑古さん。小池さんも「限られた時間の中で技術を上げて結果を残す経験はその先の人生でも生きる。強豪校と嫌でも対戦できて、たった1回でも勝ったらヒーローになれる環境があるのはありがたい」と話す。
また瀬戸さんも「仙台六大学というレベルの高いリーグで強いチームと戦わせてもらえる環境は恵まれている。高校と違っていろんな背景を持った人と出会えたのも面白かったです」と口にした。 東北大の現チームは今春、5位に終わったものの、優勝した仙台大に善戦したり、植木祐樹外野手(4年=長野吉田)が首位打者に輝いたりと存在感を示した。価値ある「1勝」を追い求め努力を重ねる日々は、秋に、そしてその先の未来につながっていく。
(取材・文・写真 川浪康太郎/一部写真提供 畑古悠人さん)