マイナス金利に惑わされるな むしろ投資リスクや手数料に注意すべし
1月末に日銀が発表し、2月16日から実施されたマイナス金利政策は今までに経験したことのない金融政策です。市場においても多少の混乱はありましたし、長期国債の利回りもマイナスが定着しつつあります。 しかしながら、マイナス金利とは言っても今のところは私たちが銀行にお金を預けると損をするというわけではありません。したがって、あまり焦ったりドタバタしたりする必要はないと言っていいでしょう。今までの資産運用に対するスタイルを特に大きく変える必要はないと私は考えています。 ところが、今回の政策で預金金利や住宅ローン金利が下がったことによって、金融機関や住宅業者等の営業マンの人たちは様々な営業攻勢をかけてきているようです。 「定期預金のまま置いておくとだめですから、投資信託を買いましょう」 「住宅ローン金利が下がった今が住宅を買うチャンスです」 一見するとこのお勧めはもっともなように思えますが、じっくり考えてみると本当にそうだろうか?と思える点がいくつもあります。マイナス金利だからと言って焦って行動しないほうがいいと考える理由をお話ししたいと思います。
焦りは禁物! すでに実質的にマイナス金利である
マイナス金利という言葉は、そのインパクトがかなり強いので「何か大変なことになるのではないか!」という印象が強いのですが、実はかなり前から実質的にはマイナス金利になっているのです。例えばATMで時間外にお金をおろすと、100~200円の手数料がかかります。1万円おろすと1~2%手数料がかかっているのです。現状の預金金利を考えると実質的にはすでにマイナス金利と同じことです。そこで預金金利が仮に0.02%→0.01%下がったところで、1万円について金利が1円少なくなるだけですから、ほとんど実態は変わらないと言えます。 また、かつて私たちは過去にマイナス金利を何度も経験しています。例えば戦後、表面的な金利が最も高かったのは昭和49年で、当時の1年定期預金の金利は年率7.75%という、今では驚くような金利ですが、当時の物価上昇率は年20%以上でしたから、実質金利でいえば大幅にマイナスだったのです。金利を見るときには表面金利ではなくて実質金利で見ることが大切です。 長い間、日本はデフレでした。デフレというのは物価が下がるということですから、仮に金利がゼロでも物価の下がった分、金利は実質的にプラスになっているということです。単純に表面的な金利だけで判断するのではなく、物価上昇や物価下落と合わせて考えるとどうかということを見ておく必要があります。