イタリア生まれのエネルジカ「EGO+」は猛烈に速くて普通にツーリングに使える電動バイクだった
しかもチャデモで急速充電を行なえば、エネルジカのバッテリーはわずか30分でかなり回復するのです。もちろん、実際の回復度合いはバッテリーの状況や走り方によりけりですが、今回は出発時が80%で、高速道路を100kmほど(アグレッシブに)走った段階で30%に低下し、チャデモで30分の急速充電を行なうと73%に回復しました。 この数値をどう感じるかは人それぞれですが、既存の電動バイクの試乗で、充電スポットの捜索に面倒な印象を抱き、走行可能な充電に要する待機時間(1時間以上は当然で、車両によっては3~6時間)に辟易した私は、「コレだったら普通にツーリングに使える!!」と感じたのです。 そういった実用的な要素に加えて、171ps(126kw)の最高出力と215Nmの最大トルク、240km/hの最高速も(リミッターで制限)、特筆したくなる要素です。 中でも、排気量が2458ccのトライアンフ「ロケット3」と大差がない最大トルクには、驚きを通り越して恐怖を感じる人が多いのではないでしょうか。 もっとも現代のリッタースーパースポーツの基準で考えれば、最高出力と最高速は驚くほどではないのですが、現在の日本で市販されている電動バイクの中で、「EGO+」はダントツに速いのです。
良い意味で、トヨタを思わせる領域
走り始めて十数分が経過した頃、私が脳内に思い浮かべたのは、1997年にトヨタが発売した初代プリウスでした。いや、超高額なMotoEレーサーの公道仕様のインプレで、200万円台で販売された4輪の大衆車を引き合いに出すのは、我ながらどうかと思いますが、世界初の量産ハイブリッド車でありながら、ごく普通のトヨタ車としてまとまっていた初代プリウスと同様に、「EGO+」も普通のバイクとしてライディングができたのです。
サクッと書いてしまいましたが、それも驚くべきことでしょう。既存の電動バイクとは一線を画するパワフルにしてトルクフルなモーターを搭載しているのに、「EGO+」は勝手知ったるエンジン車と大差ない感覚で走れるのですから。 逆に言うなら、エネルジカのモーター制御技術は相当に緻密にしてナチュラルで、良い意味でトヨタを思わせる領域に到達しているのではないか、と思います。 もっとも、スロットルを大きく開けた際の加速は恐ろしく強烈で、シフトアップの必要がないため、感覚的にはリッタースーパースポーツを凌駕するほどです。とはいえ、4種が存在するモードの中で最もパワフルなSportを選択しても、不意にフロントまわりが浮いたりリアタイヤが空転したりする気配はありません。このあたりも、エネルジカのモーター制御の巧みさを感じる部分です。 そんな「EGO+」で、少しだけ違和感を覚えたのは峠道でのハンドリングです。市街地や高速道路ではやや重いかな……くらいの印象だったのですが(車重は260kg。ただし電動バイクならではの低速前進/後退モードが存在するので、取り回しは意外にイージー)、いつもの試乗の感覚で大小のカーブが続く道を走り始めると、極端な重心の低さと回生ブレーキの利きが気になって、なかなか気持ちよくコーナーに入って行けなかったのです。 まあでも、距離が進むにつれて違和感は徐々に小さくなっていったので、この件は慣れで解消できるのだと思います。 ちなみに、数日後にすでに「EGO+」を体験している同業者と話をしてみたところ、エンジン車で過剰なエンブレを避けるように、あえてシフトダウンを行わない感覚で、スロットルを少しだけ開けて回生ブレーキの利きを抑えれば、コーナー進入は楽になるとのことでした。