定年前は「年収1000万円」あったけど…72歳まで家のローンを返すはめになった63歳大企業社員の後悔
総務省統計局の公表している「高齢者の就業率の推移(※2021年のデータ)」によると、60~64歳の男性就業率は82.7%。65~69歳は60.4%。70歳以上は25.6%にも及んでいる。新陳代謝の進まない日本社会を杞憂して、世代交代の必要性について過激に表現したイェール大学助教授・成田悠輔氏の「高齢者の集団自決・集団切腹」発言が大炎上したことは記憶に新しい。 【マンガ】5200万円を相続した家族が青ざめた…税務署からの突然の“お知らせ” では、実際に定年以降も働いている高齢者はどのように生活を送っているのか? 再雇用の実態についてある男性に取材した。 聞き手:佐藤大輝(33歳・逃げ切れない世代)
みんなと同じ道を歩んできた
ーー今回取材させていただくのは、昭和の企業戦士のロールモデルのような人生を歩んできた、酒井さん(仮名、以下同)。年齢は63歳。まずは簡単に、ご自身のキャリアについて教えてください。 酒井です。新卒入社してから現在まで、同じ食品メーカーで働いてきました。今は再雇用契約の3年目です。ずっと営業畑で、定年直前にようやく転勤族から解放。それまでは5年に1回くらいのペースで名古屋や仙台、大阪や東京など、ランダムに飛ばされてました。最初は家族もついてきてくれたのですが、妻から「もういい加減にして」と猛反発にあい、そこから15年間くらい単身赴任。役職は、35歳で係長。40歳で課長。45歳で所長になって、60歳手前で関連会社へ出向。今も出向先で働いています。 ーー結婚など、私生活についても聞かせてください。 28歳のときに結婚して、子供は29歳のときに長女が。31歳で長男。36歳のときに次女が生まれました。なお、妻はもともと専業主婦でしたが、次女が中学校に上がったころから扶養の範囲内でパートに出て、家計を助けてくれました。 真ん中の子が生まれたタイミングで3800万円の新築マンションを購入。頭金は800万円で、私と妻それぞれの両親から300万円ずつ出してもらいました。今の若い子からすると色々と信じられないでしょうが、当時は家を持てば資産価値が上がるとみんな本気で信じていた。まさかマイホームを購入した翌年、横浜から秋田へ転勤になり、さらにバブルが弾けるなんて…。 ーー天国から地獄ですね。 マイホームは賃貸で出して、40歳のときに売却。ローンが200万円くらい残った状態で、同じ年に人生2回目のマイホームを35年ローン。3900万円で購入。預金も頭金も0円でしたが、勤め先が東証一部上場企業なので審査はスッと通りました。ただし生活はカツカツで…。長女は240万円、長男は480万円、私大に進学する際は奨学金を借りてもらいました。上の子の歳が近かったので、高校・大学のあたりは経済的にキツかった。お金がかかるから勉強するなとも言えないし…。塾代もそうですが、長男が私立の高校に通うと決まったときは鳥肌が立ちましたね。