なぜ研究者は論理的でない手法を「なんとなくバカにしてしまう」のか…落合陽一が考える、「非論理的なこと」を排除せずに対話するために必要なこと
多様性をAIテクノロジーで支える試み
国立研究開発法人・科学技術振興機構(JST)の研究プロジェクトである「JST CRESTxDiversity」では、筑波大・東京大・富士通・ソニーコンピュータサイエンス研究所(Sony CSLチーム)とともに、計算機によって多様性を実現する社会に向けた超AI(artificial intelligence)基盤に基づく空間視聴触覚技術の社会実装を行ってきました。 この研究のテーマは「どうやって人の多様性をAIテクノロジーで支えるか」というもので、自動化された車椅子やロボット義足がその一例です。 少子高齢社会に突入した我々にとって、テクノロジーを用いた社会の改善は急務です。我々の社会には、高齢化や先天的もしくは後天的な理由によって運動の自由が利かなくなったり、視聴覚機能の低下が生じたり、発話やコミュニケーションに困難が生じたりといった多様な困難を抱えて生きていくことを強いられる人々がいます。 本記事で紹介するJST CRESTは、人の身体や感覚器の機能補完や拡張のためにタスク志向型のAIソフトウェアおよび身体拡張デバイスの開発を行いながら、研究の社会実装により多様性社会実現を目指すプロジェクトです。 タスク志向とは、万能の判別機や学習機を目指すのではなく、あるタスクに特化したソフトウェアを志向することを指します。本プロジェクトの目的は、タスク志向型の開発を積み重ねることで、技術開発の方法論やコミュニティ形成、検証方法などを含めたノウハウと方法論、およびオープンソースのソフトウェアを共有することにあります。 本プロジェクトは2017年から2019年3月末までのスモールフェーズと2019年4月以降の加速フェーズの2期に分かれており、スモールフェーズでは、視聴覚能力やロボティクスによる能力拡張・コンピュータビジョンと機械学習・障害者向け能力拡張デザイン・運動能力拡張ロボティクスの専門家による4グループを組織し、一つの社会実装チームとして上記のようなタスク志向開発に取り組みました。 聴覚補助デバイス(富士通・東京大学)、自動運転車椅子(筑波大学)、ロボット義足(Sony CSL)を具体的なタスクとしながら、それぞれが加速フェーズに向けたいくつかの試験検討を行い、タスクごとに垂直統合したチームを組織し、解決に当たるための方法論について検証を行いました。 その後2019年4月から2023年3月までの加速フェーズを行い、コロナ禍という状況を顧みつつ社会のデジタルトランスフォーメーションに伴いながら、進んでいます。