世界M&A総額が3.1兆ドルに回復、バンカーはトランプ氏復権に期待
(ブルームバーグ): M&A(企業の合併・買収)が2024年に回復しつつある中で、バンカーらはトランプ次期米大統領の返り咲きが追い風となるのか逆風となるかを見守っている。
ブルームバーグの集計データによると、各国中央銀行によるインフレとの闘いと利下げ開始を背景に、世界のM&A総額は今年これまでに16%増え3兆1000億ドル(約475兆円)に達した。
借り入れコストの低下や株式相場の好調を受け、一部企業は自信と資本を得て取引を推進。新型コロナウイルス禍後の環境正常化の機会を生かし、資産売却やスピンオフによる事業整理を進めている企業もある。
ここ数週間は、広告や建築資材、銀行などの分野で数十億ドル規模のM&Aが相次いだ。プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社が米欧の市場で割安な水準で買収しようと再び財布のひもを緩めたこともあり、ディールメーカーらは新年に向けて勢いづいている。
アドバイザリー会社ライオンツリーの共同創設者兼マネジングパートナー、エレン・ステンツラー氏は「オフィスでは活気が感じられ、ディールに関する会話が増え、トーンが変わってきた。ここ10日間でもそうした傾向が見られる」とコメント。「大型案件の話もいくつかあり、2カ月前には実行可能だと思われていなかった案件が再び注目を集めている」と述べた。
投資銀行業界関係者の間では、トランプ氏が政策課題に掲げる法人税減税で買収資金がさらに捻出され、規制緩和で大型ディールへの障壁が低減されることで、M&A回復に弾みが付くとの強い期待がある。
「25年に力強く回復する条件はほぼ整っている」と言うのは、バークレイズの米州M&A担当部門を率いるダン・グラボス氏。「米大統領選が終わり、成長を促す規制緩和の環境が整うという楽観的な見方が根底にある。今後は、100億ドル超えの変革的な案件から、より多くの中型案件まで、あらゆる分野での取引が続くだろう」と同氏は予想した。