ボルボEX30 詳細データテスト 高い動力とほどほどの操縦性 物足りない乗り心地 厄介な監視機能
使い勝手 ★★★★★☆☆☆☆☆
■インフォテインメント EX30に装備される12.3インチ画面のインフォテインメントシステムは、Googleオートモーティブのソフトウェアを用いるが、導入時点でAppleとAndroidのミラーリング対応も確約されていた。ところが残念なことに、ボルボがOTAアップデートで追加されるとしていたAppleとの互換性が、テスト車を見る限り導入されていない。同様の問題は、ポールスター2の導入時にもあったのだが。 トップ画面には、競合するシステムにあるようなユーザーが調整できる能力が欠けていて、メニューの階層を掘り進めないと使用頻度の高い機能へたどり着けないことも少なくない。ボルボはホーム画面に幾つかのパターンを用意しているが、ショートカットを並べたツールバーは不在。この有無が、使い勝手を大きく左右すると思うのだが。 今のままでは、ドライバビリティに直接関係する各機能の操作があまりに呼び出しづらい。機能をオフにしたはずが、再起動のたび勝手にリセットされてオンになるのもうっとうしい。 Googleベースのナビを用いる利点は、Googleアカウントを持っていればアドレスや目的地をセーブできることだ。テスト車にはハーマンカードンのプレミアムオーディオが装備されていたが、ドアスピーカーがないので、音はやや痩せ気味だ。 ■燈火類 LEDライトは標準装備で、パワーも照射範囲もかなりのもの。自動減光機能は備わるが、前走車への反応は対向車へのそれより遅い。 ■ステアリングとペダル 一般的な2ペダルのレイアウトは問題なく、ブレーキペダルは左右どちらの足でも操作しやすい。ステアリングコラムは、チルトもテレスコピックも調整幅が広い。
操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆
ボルボは、25年前と比べたらガラリと様相が変わってしまった。そうでないとしても彼らが、少なくともハンドリングに関して、アジリティやファンな要素で多少なりとも味付けした、若者向けのスモールカーを送り出すとは予想しなかったのではないだろうか。 とはいうものの、EX30はそこを売りにするクルマではない。ステアリングはかなり軽くてフィールはダイレクトでなく、ペースはほどほどだ。小さなクルマに時折見られる素早くエネルギッシュなノーズの動きを装うことはなく、ハンドリングは常に直観的だ。 しかしそうであっても、気合を入れると走りには明らかに鋭さの兆候が現れる。横グリップのレベルと旋回時のボディコントロールは、クロスオーバーモデルとしてはかなりいい。ターンインは安定しているがロールに耐える構えができていて、四輪の接地面を駆使してタイトな走行ラインを断固捉え続ける。そのとき、前輪が軽くなるフィールはまったくない。リアモーターながら、前後重量配分は48:52というバランスも効いているのだろう。 安全策として常にアンダーステア傾向とすることはなく、安全性重視の安定性を主張するためにスタビリティコントロールの介入を強めることもしていない。 特別に走りが楽しいクルマではない。活発さに欠けるところがあり、穏やかさが勝っている。ステアリングやシャシーのレスポンスは、クプラ・ボーンのようなドライバーを夢中にさせてくれるクルマに後れをとっている。それでも、まずまず気持ちいいドライビングを味わえる。