日本代表最終ライン争いへ昌子源が3か月ぶりに戦列復帰!
あのときと同じ光景が、図らずも目の前に広がった。後半のアディショナルタイムに発動された、相手チームのカウンター。自分たちのゴールへドリブルで迫る選手の背中を、昌子源が必死に追走していく。 日本時間7月3日未明にベルギー代表と対峙した、ワールドカップ・ロシア大会の決勝トーナメント1回戦。 相手ゴール前から仕掛けられたカウンターに危機を察知した昌子は、80m近い距離を全力でダッシュ。最後は乾坤一擲のスライディングを仕掛けるも、懸命に伸ばした左足は決勝ゴールを決めたMFナセル・シャドリ(ASモナコ)にわずか50cmほど届かなかった。 ロシア南部のロストフ・アリーナのピッチに突っ伏し、何度も芝生に叩きつけた拳を介して悔しさ、不甲斐なさ、無力な自分に対する腹立たしさを爆発させてから3ヵ月半もの時間が経過した。舞台が埼玉スタジアムに、相手が浦和レッズに、ユニフォームが日本代表から鹿島アントラーズに変わった20日の明治安田生命J1リーグ第30節。アントラーズの1点ビハインドで迎えた後半48分だった。 味方からの縦パスを絶妙のトラップで収めたレッズのFW武藤雄樹が、一気に縦へ加速しながら立ちはだかろうとしたDFチョン・スンヒョンとMF永木亮太の間を突破する。残されたのはGKクォン・スンテだけ。絶体絶命のピンチで、武藤の背中を右後方から追ってきたのが昌子だった。 シャドリを追ったときよりも、武藤と標的との間合いは近かった。必死の形相で迫ってくる昌子の姿を、間接視野で把握していたのだろう。ペナルティーエリア内へ突入した直後に、武藤は計算を働かせる。 「相手の前へ入ることで、最悪の場合でもPKを獲得できれば、と思いました」 ドリブルするコースを右方向へ、ゴールからやや遠ざかるように起動修正する。接触してはいけないと思った昌子が、体を入れ替えるように左方向へ走るコースを交差させた直後だった。 「右ひざを伸ばした状態で、芝生を踏みつけてしまって」 今回はスライディングを見舞うこともできなかった。ダメを押される3点目を見るだけだった昌子は、そのままゴールラインの外へ向かって何度も右ひざをさすっている。何とか復帰するも、直後に試合終了を告げるホイッスルが鳴り響くと、今度はピッチ上に座り込んでしまった。 「あのときは自分でもちょっとまずいと思いましたけど、徐々に感覚が戻って、痛みが引いてきたので次も大丈夫かなと思っています」