トヨタが包丁やガラス工芸を製作!? クルマの廃材が伝統工芸に生まれ変わるプロジェクトを開始
トヨタ自動車は、宮城県と共同で自動車の廃材を活用した伝統工芸品の製作プロジェクトを開始。鉄廃材を用いた「包丁」とサイドガラスの廃材を用いた「ガラス工芸」を宮城県内の職人・アーティストと共に制作した。 【画像】これが車の廃材から作った包丁だ! グラスやガラス工芸もカッコイイ(全11枚)
トヨタ×宮城県、クルマの廃材から伝統工芸を製作!
トヨタ自動車は、宮城県と共同で地域の伝統工芸品に自動車廃材を取り込み、新たな価値を創造することを目的としたプロジェクトを開始した。 トヨタ社内の構造デザインスタジオは、「捨てるところのないクルマづくり」を推進。車両構造を素材と工法から見直すことで、資源使用量の削減やリサイクルしやすい構造の実現を目指している。この取り組みの一環として、リサイクルできない素材を新たな製品や作品へと生まれ変わらせるアップサイクルを実施。これらの活動を総称して「Geological Design(ジオロジカルデザイン)」と呼んでいる。 今回、そのジオロジカルデザインとして、トヨタ自動車が提供した自動車廃材の鉄とガラスが、中新田打刃物(なかにいだうちはもの)を手掛ける石川刃物製作所と、独創的なガラス作品を手掛ける海馬ガラス工房の手により、包丁とガラス製品へと生まれ変わった。これらの製品は今後一般発売も検討されている。
アップサイクルで製作された「包丁」と「ガラス工芸」
■中新田打刃物 自動車廃材アップサイクル包丁 製作:石川刃物製作所 使用素材:自動車の鉄端材 包丁を制作した石川刃物製作所の石川美智雄氏は、「鉄廃材を命の源である“食”へと繋げられることや新しい鋼材での製作に挑戦出来ることが非常に面白いと思い、協力させていただきました。従来の鋼材とは全く異なる素材のため、感覚を掴むまでに苦労しました。1か月半ほど試作を繰り返しましたが、出来上がった製品の切れ味には非常に自信を持っています」とコメント。 また、トヨタの原点である織物で使われる藍染を取り入れた「藍色の柄」を組み合わせた三徳包丁も製作。中新田打刃物の魅力を多くの人に知ってもらいたいと述べた。 ■自動車廃材アップサイクルガラス製品 製作:海馬ガラス工房 使用素材:自動車廃ガラス(サイドガラス) ガラス工芸を制作した海馬ガラス工房の村山耕二氏は、「工業的素材のガラスは、工芸素材としてのガラスに比べ、保熱と冷める温度の変化に独特の特徴があるため、取り扱いに慣れるまでに少なくとも3ヶ月くらいは試行錯誤してきました。現在もまだ途上にいる感覚です。両者の素材としての差異を探り、活動を続けてゆくことで、最終的には自動車廃ガラスを純粋な素材として認識し、アップサイクルという意識がなくなる素材循環の世界が訪れることを期待したいです」とコメントした。 トヨタの構造デザインスタジオ テーマプロデューサーである大學孝一氏は、「自動車廃材がみやぎの伝統工芸品・美術品の認知度向上につながり、少しでも地域振興に役立つのであれば大変嬉しく思う」と述べ。さらに「今後は宮城県に生産拠点を置くトヨタ自動車東日本株式会社から生じた自動車廃材を用いることで、地域完結での自動車廃材の地産地消を実現していきたいと考えています」と展望を語った。 トヨタは今後も、環境に優しいクルマづくりに取り組むと共に、地域の伝統工芸品・美術品の知名度向上や産業振興への協力を通じて「町いちばんの会社」を目指していくという。
KURU KURA編集部