【アメリカ大統領選の最重要争点】バイデンは人工妊娠中絶問題で再びトランプに勝てるのか?
譲れない争点、人工妊娠中絶
米国人は人工妊娠中絶問題に関して、バイデン大統領とトランプ前大統領のどちらの候補者を支持しているのだろうか。 米ABCニュースと調査会社イプソスの全国共同世論調査(24年4月30日発表)によれば、バイデン大統領は、経済、メキシコとの国境問題、銃による暴力、インフレ、イスラエル・ハマス戦争および犯罪に関する全ての支持率で、トランプ前大統領を下回ったが、人工妊娠中絶問題においては、トランプ氏を12ポイント上回った。 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの人工妊娠中絶に関する全国世論調査(同年3月17~24日実施)では、バイデン大統領は激戦7州(アリゾナ、ジョージア、ミシガン、ノースカロライナ、ネバダ、ペンシルベニア、ウィスコンシン)で、トランプ前大統領を9ポイントから17ポイントリードした。 一般に米大統領選挙では、経済やインフレの支持率が勝敗の行方を決定すると言われているが、人工妊娠中絶は他の争点とは異なり、ユニークな特徴を有している。 それは、英誌エコノミストと調査会社ユーガブの全国共同世論調査(24年4月28~30日実施)の結果から読み取れる。同調査で、「ある候補者と大抵の争点について同じ意見だが、人工妊娠中絶に関して意見が違う場合、その候補者に投票するか」と尋ねたところ、「おそらくしない」と「しない」の回答の合計は30%になった。 全体で3割が大抵の争点においてある候補者に賛同しても、人工妊娠中絶で自分の意見と一致していなければ、その候補者に投票しないというのだ。彼らは、種々の争点の中で人工妊娠中絶問題において候補者と同じ意見であることを最優先し、中絶問題を「譲れない争点」と捉えている。 党派別にみてみると、上と同じ質問に対して「おそらくしない」と「しない」の合計が、民主党支持者34%、無党派層29%、共和党支持者28%であった。2020年米大統領選挙と同様、今回の大統領選挙も接戦が予想されるとなると、これらの数字の持つ意味は極めて大きい。