絶対王者・羽生を襲う疲労蓄積という敵
フィギュアスケートの世界選手権代表選考会兼全日本選手権が25日、北海道の真駒内で開幕、男子ショートプログラムが行われ、大会4連覇を狙うソチ五輪金メダリストの羽生結弦(21才、ANA)が、冒頭の4回転サルコウで転倒したものの、102.63点で首位発進した。 ライバルは自らの記録だった。NHK杯、GPファイナルと続けて、SP、フリー、合計の世界歴代最高得点を塗り替えてきた羽生にとって、この全日本のライバルは自らの記録であったが、冒頭の4回転サルコーで、着氷直後にバランスを崩して両手を着いて転倒したが、動揺は見せずにしっかりと立て直す。すぐさま立ち上がると、続く4回転トゥループ+3回転トゥループのコンビネーションジャンプは、パーフェクトに成功。出来栄え点が最高の3.00がついた。トリプルアクセルも綺麗に着氷を決め、110.95のGPファイナルの得点には及ばなかったが、転倒以外は絶対王者に恥じない演技内容だった。 なぜ、転倒が起きたのか。 考えられる要因のひとつは、11月27-29日のNHK杯、12月11―13日のGPファイナルから、この全日本と詰まったスケジュールによる疲労の蓄積だ。 「若干、跳び急いだのか、踏み込みのスピードにズレがおき、軸が左に外れてしまったのが原因でしょう。ずっと100パーセントのコンディションを維持することは簡単ではなく、疲労の蓄積も影響したのかもしれません。4回転サルコウの確率がアップしたのは今季に入ってからですから、そういう一番難しいエレメンツに疲労の蓄積のしわ寄せが出てのかもしれません。 疲労が蓄積してくると、イメージと実際の肉体の動きにかすかなズレが生まれます。しかも、転倒すると大きく体力を消耗をしますが、その後何ごともなかったように完璧な演技を続けたリカバリーは素晴らしかったですね。疲労がどう影響しているのかは、明日のフリーで、ハッキリするのではないでしょうか」とは、元全日本4位でフィギュアに関する著書もある現在インストラクターの今川知子さんの分析だ。 羽生自身は、「僕の中ではそういうもの(疲労の蓄積)は感じないです。いつも連戦の中で、どんな環境でもノーミスを目標にやってきています」と、否定した。それよりも日本開催というリラックスして臨める環境の違いが、逆に緊張感を奪い、心身のバランスに影響を与えたのではないかと自己分析している。そういう思考回路もまた羽生らしい。 「今日の良かった点、反省点をみつけ、いい演技ができるようにとにかく集中して頑張っていきたい」 転倒しても100点超えするところが、羽生が進化した2015年の立ち位置。成功に成功を続けて、どこへ向かうかのゴールが見えなくなるよりも、ミスをしたほうが、羽生にとってライバルである自らの記録への逆襲を仕掛けやすいのかもしれない。