難聴は認知機能の低下を引き起こす?~改善できる危険因子・難聴①
改善できる危険因子
「聞こえ」について、皆さまは何か考えたことがあるだろうか。 「年を取ると聞こえづらくなる」とか、「高齢者には大声で話す人が多い」とか、「聞こえなくなるのは当たり前だし、仕方ない」――そんなイメージをお持ちだろうか。 【画像】難聴は認知機能の低下を引き起こす?~改善できる危険因子・難聴(1) では、聞こえづらさが認知症に関係すると言ったら、どうだろう? 真剣に対策しようと考える人は、どれくらいいるだろうか。 と、問いかける形で書いたのは、私自身が「聞こえ」について、余り考えてこなかったからである。アクシデントなどでふいに不調を感じたりした時だけ急に、真剣に考えたりもしたこともあるけれど、普段は自分の耳について意識することはほぼない。また、定期的に聴力検査を受ける習慣も持っていない。私にとって、「聞こえる」というのはごく当たり前のことであり、遠い未来の可能性としても「聞こえなくなる恐れがある」とは、想像したこともなかった。去年、認知症を回避する方法を調べ始めるまでは……。 そう、この連載で書いてきた通り、私は去年からにわかに認知症について調べ始めた人間である。そして調べ始めてすぐに知ったのが、認知症には「科学的な根拠に基づく危険因子」というものがあり、その一つに難聴があげられているということだった。 認知症に長く携わってきた人たちにとっては、もしかしたら難聴という因子は割と新しいものなのかもしれないが、去年から調べ始めた私には、最初に意識すべき大きな要素として頭にインプットされた。なぜかというと難聴には、「改善できる」という側面があると同時に知ったから。
12の危険因子とは?
2020年に世界的な医学誌「ランセット」の国際委員会が発表した報告によると、認知機能低下の危険因子のうち介入可能なものは12あり、その筆頭に難聴があげられている。 12の危険因子とは、「難聴」の他、「幼少期の教育」「喫煙」「抑うつ」「運動不足」「高血圧」「社会的孤立」「肥満」「糖尿病」などで、これらを改善することができれば、理論上は認知症のおよそ40%について、発症や進行を遅らせたり、回避したりできる可能性があると言う(難聴は、トップの8%だ!)。 ちなみに「12」の因子とは、現在までに科学的根拠が証明されているものであり、研究途上にある「睡眠」などの因子が将来加わると、認知症になる可能性はもっと減らせるかもしれないとも言われている。