【カフェ ヴィヴモン ディモンシュ】 “いつの間にか通りで2番目に古い店” 鎌倉で30年間愛され続ける理由
非常時でもおいしいコーヒーでほっとしてほしい
隆志さん しかも、当時は「カフェ」という言葉自体が今のように浸透していたわけではなく、喫茶店というほうが理解されていた時代でしたしね。鎌倉には、昔ながらのいい雰囲気の「門」や「イワタ」「扉」といった喫茶店があって、残念ながら「門」は北鎌倉店のみになってしまいましたが、他の2店は代替わりして今も人気です。 ――つまり、喫茶文化はあったわけですね。それから雰囲気は変わりましたか? 隆志さん 今の鎌倉は、30年前に比べると自由度が上がったかな。若い人たちも増えて活気があると思います。 じわじわやってくる時代の移り変わりを目の当たりにしながら、常に自分たちの道を信じ、コーヒーともフードともひとつひとつていねいに向き合い、努力を惜しまず歩き続けてきた30年。その間には、記憶に新しいところでは世界中が沈黙の数年を送らざるを得なかったパンデミックがあり、その前には東日本大震災も。鎌倉は計画停電が実施され、仕入れたばかりのエスプレッソマシンを前に呆然とした、とおふたりは話してくれました。 ――東日本大震災やパンデミックのような過酷な状況の中でも、お店を開けることで今までいらしてくださっていたお客さんたちが少しでもほっとしてくれたらとの思いで、スタッフを入れずにたったふたりでお店を開けていた時期もあったそうですね。 堀内千佳さん そう、やっぱりコーヒーを飲むとほっとしますからね。(本をめくりながら)30年、数えきれないほどさまざまな出来事がありました。うれしいこと、楽しい思い出もたくさんだし、人との出会いがあって、助けられながら今の自分たちがいるんですよね。
30年の思い出を詰め込んだ一冊
6月4日に発売になった『鎌倉のカフェ ヴィヴモン ディモンシュの30年』は、そんなふうに築いてきたお店の歴史、コーヒーの焙煎やメニュー開発のこと、オリジナルグッズの歴史などとともに、ふたりを形成してきたことなどがまとめられた一冊です。 ――今回発売された本には、お店の歴史はもちろん、メニューのこと、そして焙煎のことなども書かれていて内容が充実していますが、本ができて一番に何を思いましたか? 千佳さん 私は単純に「うれしい」という気持ちが一番にきました。あとはお客さんたちがそれぞれにお店の歴史とご自身の人生を重ねて喜んでくださって、メッセージをいただけたことが、幸せで。 ここ数年、おかげさまで忙しく、今日その日を生きている感じで。なかなか振り返ることができなかったから、この本を制作することで今までのことを思い返せたのもよかったです。 今まで、マスターの隆志さんのコーヒーにまつわる著書はあったけれど、お店としての本は、実は今回が初めて。この本のメインともいえる、これまでのメニューについて書かれたページには、厨房のマスターである千佳さんなしでは語ることのできない秘話がたくさん。今の鎌倉のカルチャーの礎になったカフェの足跡を、たっぷりの写真やレシピで。ぜひ手に取ってみてくださいね。 鎌倉のカフェ ヴィヴモン ディモンシュの30年 定価 2,200円(税込) KADOKAWA カフェ ヴィヴモン ディモンシュ 所在地 神奈川県鎌倉市小町2-1-5 櫻井ビル1F 電話番号 0467-23-9952 営業時間 11:00~18:00 定休日 水・木曜日
赤澤かおり