NTT西日本「トップ辞任後」に試される改革の真価 新規事業の育成託された「異色社長」は引責辞任
そこでNTTグループが森林氏に期待したのが、海外経験などで培った知見を生かした新たな収益柱の育成だった。実際、森林氏は2022年7月に実施した東洋経済の取材に対して「新規事業を伸ばすのが私の使命」と語っていた。 森林氏は就任して早々、2022年度に「増収」「増益」の決算を達成することに加え、「2025年度までに新規事業の売上高比率5割超(2021年度実績は約3割)」という目標を掲げた。 しかし就任から2年近くが経った今、目に見えた成果は出ていないどころか、業績はさらに厳しさを増している。
就任初年度となる2022年度決算は減収減益に沈み、2023年度も第3四半期までの累計決算は減収減益となっている。とくに営業利益では、両期間とも前期比で1~2割の大幅な減益だ。固定電話の落ち込みに加え、電気料金高騰などコスト面の影響が大きかった。 新規事業の売り上げ比率についても、2023年度通期には4割弱となる見込みではあるものの、「2025年度に向けては成長分野の伸びが期待できるようになってきたが、(同年度に5割達成というのは)依然として厳しい目標」(森林氏)という。
森林氏は経営改革の進捗について、「まだ道半ば。(退任することになって)個人的には本当に残念」と悔やむ。一方で、「2023年度はまだまだ(数字として)上がり切っていないが、今後2~3年かけて伸びていく下地ができてきている」と強調し、社長として在籍した間に種まきはできたとの認識を示す。 具体的に成長を見込んでいるのは、自治体や学校向けのDXのほか、高速光回線の「フレッツ 光クロス」や、子会社のNTTソルマーレが展開する電子漫画などだ。
とくに自治体向けのサービスでは、2023年5月からマイクロソフトと提携し、同社のサービスを共同で提案していく体制を整えていた。2025年度末までにすべての自治体が業務システムの一部について、行政向けITプラットフォーム「ガバメントクラウド」への対応を義務づけられていることなども追い風になるとみられ、「2024~2025年にかけてかなりの伸びが期待できる」(森林氏)。 ■後任社長はNTTらしい“守り”の人事?