【光る君へ 大河絵(光る君絵)】色鮮やか“平安大河絵巻”の裏で大石静マジックの“犠牲者”数知れず…
女優の吉高由里子(36)が主演を務めるNHK大河ドラマ「光る君へ」(日曜後8・00)は29日に総集編が放送され、2024年を駆け抜けた。15日に最終回となる第48話が放送され完結。イラストレーターの石井道子さんが1年間追い続け、描き続けた「光る君絵」も48枚の連載を終えた。その集大成ともいえる「大河絵巻」。前2作とは趣が違った雅な大河を、制作“秘話”を交えながら振り返る。 【写真】イラストレーターの石井道子氏が描いたNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」最終章“大河絵”(鎌倉絵・殿絵)「三谷幸喜版『吾妻鏡』…鎌倉殿の13人よ、永遠に」 今作で3年目となった石井さんの大河絵連載。闇落ちしていく北条義時を中心とした“ダーク大河絵”が懐かしい「鎌倉殿の13人」、松本潤演じる徳川家康とその家臣団ら多くの戦国武将やその家族たちの心を描いた“どうする絵”の「どうする家康」とは時代が異なる平安大河は、石井さんにとっても新たな挑戦となった。 戦らしい戦は「刀伊の入寇」くらいしかなかった戦場や戦いなき大河絵。前2作とは明らかに「色味」が違った。甲冑や戦場が消え、雅な宮中や十二単に代表される色鮮やかで高貴な衣服や装飾品など、明らかにテイストが異なる大河ドラマだったが、“ラブストーリーの名手”大石静氏がオリジナル脚本を手掛けたことで、随所に“マジック”が散りばめられ、ストーリーも映像も見る者を魅了し続けた。 スポニチアネックス大河絵チームは過去2作品同様、「石井先生」と放送を見て描くシーンを話し合うサポート担当が2人(ともに中年男性)と“迷トリオ”の布陣は変わらず。今作で特に悩んだ点は、1話ごとに見どころ(描きどころ)が毎回3場面くらいあったこと。放送の冒頭シーンから“今回はこの場面で決まりっ!”“いや?ここだな”の連続で、“どうする?”の連続だった昨年よりもさらに“どこの場面も捨てがたい…”の連続となり、石井さんへの“無茶ぶり”が多くなってしまった。さらに“来週(次回)はこの人で間違いない”と判断したものが、ことごとくその予想を超えていき“描くのは次回に取っておこう”が覆され、描けなかった“犠牲者”は数知れず…。まさに大石脚本と製作陣、そして演者の凄さを体感し続けた1年となった。 それでも、いつも笑顔でサポート2人の話し合いを聞いた上で、自身が描きたいものへの“芯”はブレない…1年間作品を描き続けた石井さんは、まるで道長(柄本佑)の無茶ぶりをものともせず「源氏物語」を完成させた、まひろ(吉高由里子)=紫式部のようだった。 石井さんの優しさは変わらず“従者”2人の熱いだけの感想をくみ取ったばかりに、今作も描き切れなかった場面や人物も…。昨年の反省は全く生かされなかったどころか、「あそこ泣けたよね…」「あれは外せないでしょ」「全部書きたいよね~」と無責任な、ただの作品ファンの“二人言”は増すばかりだったが、石井さんの細部へのこだわりは背景だけでなく、さまざまなアイテム、色使いにも及び、雅な平安絵巻に一層の魂を吹き込んだ。もちろん“真骨頂のダーク絵”も健在。伊周(三浦翔平)を描く際には、出来上がりを中年従者2人が誰よりも心待ちにしていたのは言うまでもない。 3作目となった「大河絵巻」にも、最終回で描き切れなかった描き下ろし人物がどこかに…。是非、1年間の「光る君へ」を振り返りながら探してみてください。 今年も石井さんの描く「大河絵(光る君絵)」を楽しみにしてくださった皆さま、応援してくださった皆さま、1年間本当にありがとうございました。 ◇石井 道子(いしい・みちこ)絵描き。千葉県生まれ。清野菜名と松下奈緒がダブル主演を務めたテレビ朝日の昼帯ドラマ「トットちゃん!」(2017年10月期)劇中画を手掛ける。「ALL OF SHOHEI 2023 大谷翔平写真集」「スポニチ URAWA REDS 2023 浦和レッズ特集号」(スポーツニッポン新聞社)などにイラストを掲載。スポニチアネックスでの大河絵連載は「鎌倉殿の13人」(2022年)、「どうする家康」(2023年)に続き3年目。