「本を読むよりYouTube」「子どもと遊ぶよりネトフリ」になってしまう恐るべき理由
インターネットポルノは、多くの点で究極の超刺激である。『Your Brain on Porn』(邦題『インターネットポルノ中毒:やめられない脳と中毒の科学』、山形浩生訳、DU BOOKS)の著者ゲイリー・ウィルソンは、「ポルノサイトには新奇性の追求がそのレイアウトに組み込まれている。複数のタブを開いて何時間もクリックを続けることで、狩猟採集時代の先祖が一生かけて経験したより多くの新たなセックスパートナーを10分ごとに“体験”できるからだ」と述べている。 性的興奮は他の何よりもドーパミン濃度を上昇させるので、人工的ではあるが、実際のセックスよりもはるかに新奇的であるインターネットポルノに強い中毒性があるのも無理はない。 ● 超刺激を得られる ポルノの深刻な弊害 他の超刺激と同様、ポルノにも深刻な弊害がある。ある研究によれば、「ポルノを見たあと、被験者の親密なパートナーに対する満足度(パートナーの愛情、身体的外観、性的好奇心、性的パフォーマンスに対するもの)が低下した」という。つまりポルノは性的な親密さを台無しにし、パートナーの魅力を損なう可能性がある。ポルノを見ると、同じ相手の魅力が下がってしまうのだ。 しかも、この研究はインターネットにポルノが登場する前の1988年に実施されたものだ。当然、現在ではポルノの新奇性はますます過剰になっているので、その分、悪影響も大きくなっている。パートナーとの親密な時間では、ポルノを見ている時間よりもドーパミンの放出が少ない。その結果、人間の原始の脳は、その時間をインターネットでポルノを見る時間よりも価値が低いと考えてしまう(一方、パートナーと親密に過ごすと、心の平穏に関連する化学物質が多く放出される)。 ポルノの使用は不安や抑うつにつながりやすい。それはこの超刺激が心を不安にさせ、ドーパミンに依存させやすいからだと考えられる。SNSが人間のつながりをシミュレートしながらも友人との親密さを減少させているように、ポルノも親密なつながりをシミュレートしながらパートナー(パートナーがいない人は、将来のパートナー)との親密さを減少させている。 注意を怠り、目新しさを絶え間なく求め続けた結果、深い絆で結ばれた人間関係でさえも、その犠牲になってしまいかねないのだ。
クリス・ベイリー/児島 修