「本を読むよりYouTube」「子どもと遊ぶよりネトフリ」になってしまう恐るべき理由
● インターネットは 「超刺激」の巣窟 インターネットには、科学の専門用語で「超刺激」と呼ばれるものが溢れている。成果マインドセット(編集部注/“多くを成し遂げるために常に努力すべき”と人を駆り立てる習慣化した態度や信念のこと)とモア・マインドセット(編集部注/どんな犠牲を払っても「もっと」を執拗に追求する態度)に加えて、超刺激は現代社会が人を不安にさせる大きな理由になっている。 超刺激とは、「人間が自然に楽しむようにできているものを高度に加工し、誇張したもの」だと言える。現実の刺激を強化した、人工的なバージョンの刺激だ。人にできるだけ多くのドーパミンを与えて、何度もリピートを促すような仕組みになっている。これは、これらの刺激がその人にとって目新しいものになるようにアルゴリズムによって調整されている場合に特に当てはまる。超刺激のほとんどは、ネット上にある。 その結果、現代社会には、自然でバランスの取れた化学物質の分泌を促す行動の代替となる、刺激的な行動が溢れている。例を挙げよう。 ・SNSのチェックは朝食を食べながら友人と話すより刺激的である。 ・ポルノはセックスよりもドーパミン作用が強い。 ・アプリからテイクアウトを注文するのは、配偶者と一緒に夕食をつくるより刺激的である。 ・お茶を飲みながら良書を読むより、ユーチューブの動画を見る方が刺激的である。 ・ソファに寝転んでネットニュースを読むのは、自転車や散歩などの運動をするより刺激的である。 ・Netflixを長時間見ることは、配偶者とボードゲームをしたり、子どもとリビングルームで遊んだりするより刺激的である。 選択肢を与えられると、人はドーパミンができるだけ多く放出される行動を選びがちだ。超刺激は、たとえその喜びが短時間で終わるものだとしても、人が時間や注意を費やせる他のあらゆるものより多くのドーパミンを促す。 ● ドーパミンが放出されやすい 3つの要素 ある活動は、脳内で放出されるドーパミンの量が多いほど、次第に中毒性を増していく。研究によれば、ドーパミンの放出量の大きさには次の3つの要因が影響している。 1.新奇性――驚きや意外性の度合い。 2.顕著性(直接的効果)――刺激が具体的かつ直接的に日常生活にどの程度影響しているか、あるいはどの程度重要か。 3.遺伝――生まれつき、脳の一部の領域でドーパミン濃度が高くなったり低くなったりする人もいる。 脳について書くときには、ある程度の単純化が必要だ。たとえば本稿では主にドーパミンが心を過剰に刺激する点に注目しているが、ドーパミンには良い側面もある。