無印良品が強気な価格改定でも深刻な客離れを起こさない3つの理由。食品や家具で平均25%の値上げも業績好調を支えるブランドの底力
無印良品を選ぶ人の保有資産はニトリの2倍以上?
データマーケティングを行うヴァリューズは、無印良品のブランド調査を行っている(「無印良品に「惚れた」のはどんな人なのか?」)。スマートフォンアプリのユーザーを対象にアンケートデータを用いた分析をしたものだ。 それによると、アプリの利用者で最も多いのは40代女性で全体23.5%だった。次いで30代、20代と続く。なお、ニトリも40代女性が18.6%で高い割合を占めるが、無印良品よりも男性ユーザーが多く、女性比率が低いという特徴がある。 無印良品が20~50代くらいまでの女性に人気が高いのは、ブランドを展開する上で重要だ。 コンサルティング会社のデロイトトーマツは、「2024年度「国内消費者意識・購買行動調査」」を発表している。その中で、サステナビリティへの関心と消費行動を調べている。 それによると、40~50代の女性がサステナビリティにとても関心がある・どちらかといえば関心があると回答した割合は42.0%。20~30代女性が41.5%だ。 一方、男性は40~50代が31.6%、20~30代は38.9%。同じ世代でも女性の方が圧倒的に関心が高い。 また、先ほどのヴァリューズの調査によると、無印良品を利用するユーザーの保有資産は平均で1017万円。ニトリの483万円、ユニクロの563万円と比較して圧倒的に高い。富裕層にも支持されていることがわかる。 つまり、ターゲットが持続可能な社会への意識が高まる中、無印良品はその分野で圧倒的なブランドを構築することに成功した。ブランド選好度が高いのだ。しかも、ターゲットは富裕層も多いために値上げ耐性があったということなのだろう。
周辺アイテムにも手を抜かない
良品計画は商品開発力も強く、それが消費者を惹きつけてもいるのも間違いない。商品力の強さが発揮されたのが売れ行き好調のレトルトカレーだ。 衣類や家具、雑貨はブランド選好度が働きやすいが、食品はそうはいかない。美味しいか美味しくないか。シンプルなその要素が重要だからだ。どんなに洗練されたブランドの食品でも、美味しくなければ2度目の購入はない。 無印良品のヒット商品であるバターチキンカレーは、2024年で6代目を迎える。初代は2009年で、かなりのロングセラーだ。 初代を開発していた当初、無印良品はこの場所でしか買えないカレーを販売しようと、ハバネロカレーやイカ墨カレーのようなエッジを利かせたものを扱っていた。 しかし、奇をてらったものは万人受けしない。そこで、無印良品でしか買えず、マス層も狙えるものの開発に着手した。 当時、バターチキンカレーは日本ではメジャーな食べ物ではなかった。それを日本人好みの味に仕上げ、ヒット商品に押し上げた。バターチキンカレーそのものを国民に知らしめた商品としても知られている。 2012年からはインドやタイへと出向き、現地の味を学ぶようになって味を洗練させるというこだわりようだ。 こうした創意工夫を重ねて、無印良品は約7000点もの商品を扱っている。主力の衣類や家具、雑貨以外の食品という分野においても、徹底的な消費者目線で商品開発を行っている。こうした企業の姿勢も、ブランドの発展に手を貸しているのだろう。 取材・文/不破聡 サムネイル/Shutterstock
不破聡