大型免許にAT限定導入でドライバーが増える……とはいかない? そんなに簡単じゃない大型ATトラックの運転
2ペダルのトラックが増えている
トラックはプロのドライバーが操るクルマなので、誰でも運転できるように操作を簡単にしたり、装備を省略することなんてできない。また、毎日遠くまでたくさんの荷物を運ぶことを想定して開発、生産されるクルマなので、乗用車よりもタフで整備性も求められる。 【画像】大型のトラックやバスは2速発進が基本となっている理由 エンジンが発生するトルクを変換する変速機も、軽自動車やコンパクトカー、ミニバンが採用しているCVTは操作が簡単で燃費も高めやすいと評判だが、じつは駆動損失も大きくて重いクルマ、大きなトルクを発生するクルマの変速機には向いていない。 ATは運転操作を簡素化させてドライバーの負担を軽減するデバイスだが、燃費が悪化したり、自分が思ったような動きにならないことにイライラするプロドライバーも少なくない。駆動損失が少ないMTは、運転操作次第で荷物を積んでも自分のイメージどおりに走らせられる、手応えのある変速機といえる。 ところが近年、トラック業界でも2ペダルのATやAMTが増えてきた。その理由は大きくわけてふたつある。ひとつはドライバーの負担軽減だ。 もうひとつ、燃費のためにもAMTは大きく貢献できる。MTでは多段化には限界があるが、AMTでは自由度が高く、幅広い使い方ができるのだ。大型トラックの場合、MTはHパターンをふたつ組み合わせた7速が標準的で、海外では9速なども使われているが、一般的にはこの辺りが限度となる。それに対してAMTはシフト操作がスイッチにより油圧などで制御するため、副変速機などを組み合わせやすく、12速が一般的になりつつある。変速段数が多いということは、同じエンジンでもそれだけトルクや回転数を変換できる幅が広くなって、燃費性能に優れることになる。 デメリットとして従来は整備性についてはMTに劣る点があったが、これはディーラーで直接変速機をオーバーホール修理する場合のことだった。現在は基本的にはリビルト済みの変速機と交換するだけなので、AMTでもMTでも作業内容はほとんど変わらない。 つまり、AMTのデメリットは実際には解消されているといってもいい。大型トラックはこれまでプロドライバーの高い運転スキルによって運行されてきたが、負担軽減のために普及が進んでいるのだ。 ここにきて警察庁も大型免許にAT限定の新設を検討し始めた。これはもちろんトラック業界の要望もあってのことだが、免許は取りやすくなるかもしれないが(クラッチより車両感覚のほうが重要だと思うが)、果たしてこれがトラックドライバーの増加につながるかは微妙なところだ。 じつはAMTでもドライバーのわずかなペダル操作がクルマの動きに影響を与えることが珍しくない。つまり、2ペダルとなっても大型トラックを運転するには、それなりのスキルが要求される、ということなのだ。 ボルボやいすゞ、三菱ふそうはトラックにDCTを用意している。これは2ペダルで運転操作がラク、というだけでなく、加速時の変速でトルク切れが起こらないので駆動系や積荷に優しいのもメリットなのだ。
トラック魂編集部