富裕層の申告漏れ980億円、過去最高の理由2つ 配信者・インフルエンサーの申告漏れも摘発
国税庁が令和5年11月22日付で令和4事務年度「所得税税務調査の実績」が公表されました。 富裕層の申告漏れ所得金額の総額が過去最高額の980億円に達した点が注目されています。 今回は公表された資料をもとに、所得税の税務調査の実績と富裕層の申告漏れが過去最高になった理由について解説します。
令和4事務年度「所得税調査等」の状況
国税庁が公表した「令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」によると、所得税の税務調査は全体で637,823件(対前年比106.3%)実施され、そのうち338,268件(対前年比106.6%)は申告漏れ等の非違事項があった件数です。 ここ数年の税務調査の実施件数は、新型コロナウィルス感染症の影響で大幅に減少していましたが、令和4事務年度の調査件数は感染症流行以前の平成30事務年度の調査件数(610,655件)を超えています。 全体の申告漏れ所得金額については9,041億円と、前事務年度の7,202億円よりも1,839憶円も増加しており、追徴税額の合計額1,368億円は過去最高額です。
富裕層に対する税務調査の実施状況
国税庁が定義する「富裕層」は、有価証券・不動産等の大口所有者、経常的な所得が特に高額な個人、海外投資等を積極的に行っている個人などをいいます。 調査担当者が自宅等に訪問し申告内容や帳簿書類等を調べる「実地調査」は、令和4事務年度では富裕層に対して2,943件実施されました。 前事務年度の調査件数は2,227件、申告漏れ所得金額の総額は当時の過去最高額となる839億円でしたが、令和4年事務年度の申告漏れ所得金額はその最高額を大幅に更新する980億円でした。
富裕層の申告漏れが過去最高額を更新した理由1:富裕層に対する税務調査件数の増加
富裕層の申告漏れ所得金額の総額が過去最高となった理由として最初に考えられるのが、富裕層に対する税務調査件数の増加です。 調査件数が増えれば申告漏れを見つける確率も高くなりますが、富裕層に対する調査件数(2,943件)は、前事務年度より716件も増加しています。 申告漏れ等の非違事項件数2,533件についても対前年比129%と、国税当局が富裕層に対する調査に力を注いだ結果が実績に現れています。