東京・多摩地域、埼玉・千葉・神奈川と「若年人口」呼び込み争い…都の手厚い子育て支援が後ろ盾
47都道府県の中で唯一、人口の増加が続く東京都。ただ、多摩地域の一部では人口減が始まり、高齢化も進む。地域の活力を維持しようと、独自に住宅購入費や通勤費を補助したり、移住希望者向けのガイドツアーを実施したりと、若年層の呼び込みに力を注ぐ自治体が相次いでいる。(青梅通信部 鈴木章功)
促進プラン
東京都青梅市の水田で11月、同市への移住希望者や移住者らが集まった脱穀体験会が行われた。2022年に世田谷区から移住してきた会社員女性(47)は、昔ながらの足踏み式の器具で脱穀に挑み、「体を動かしてリフレッシュできた」と笑顔で話した。
体験会は移住希望者や移住者らの交流を図ろうと、地元団体などが市から補助金を受けて開催した。市は22年に策定した「移住・定住促進プラン」に基づき、こうしたイベントへの補助のほか、住宅購入者への支援金(最大100万円)、40キロ以上離れた職場に通勤する人へ最長3年間支給する応援金(同18万円)など、移住者向けの補助制度を次々と創設。先輩移住者らが「コンシェルジュ」として移住希望者の相談に乗る仕組みもつくるなど、幅広い支援策を用意する。
市が矢継ぎ早に施策を打ち出す背景には、加速する人口減少と少子高齢化への危機感がある。市の人口は05年の14万840人をピークに減少に転じ、23年4月には13万人を割り込んだ。その一方で、人口に占める65歳以上の割合は同じ期間で17%から32%に上昇した。また、22年の合計特殊出生率は多摩26市でワースト2位の0・97に落ち込んだ。
青梅市によると、これらの支援策を使った移住者は22年度の28人から、23年度は133人に増加。人口減少率も改善傾向がみられ、市シティプロモーション課の松永和浩課長は「施策に手応えを感じている。次は移住支援制度や青梅の魅力を広く伝えるのが課題だ」と力を込める。
青梅市に隣接する奥多摩町でも若年層に住宅購入費を補助したり、住宅を割安で貸したりしているほか、檜原村では村内の空き家に移住者を呼び込もうと、転居費や改修費などを助成するなどの取り組みを進める。