車重3トン超えで0-100km/h加速4.7秒はそら恐ろしい! 新型Gクラスに追加されたEVモデル、G580に自動車評論家の高平高輝が試乗 必殺技は720度Gターン!!
最強のオフローダーがEVなんて、もう驚くほかありません!
最も電動化からは遠い存在かと思っていたGクラスにEVが登場。1基のモーターで1輪ずつを駆動するメリットを活かし、内燃機関モデルを上回る自由自在の機動力を得ることに成功した。モータージャーナリストの高平高輝がリポートする。 【写真48枚】内燃エンジンモデルと見分けがつかないG580の詳細画像はこちらで! ◆泣く子も黙るGターン! 回る回るよ、クルマが回る、そういう時代に本当になったんだなあ、と感慨深い。300km/h以上出せるんだぜ、と言ってもそれを証明できる場所はごく限られる。それに比べて、平らで広い空き地があれば目の前でグルグル回れる「Gターン」は一目瞭然、自慢しやすい。目の前でガーッと回転するのは泣く子も黙るメルセデスのGクラスなのだからインパクトは強烈だ。 マイナーチェンジを機に追加されたGクラス初のEVは、プロトタイプ当時の「EQG」ではなく、「G580 with EQテクノロジー」という何とも長い名称で発売された。さらに当面の日本仕様は導入記念特別仕様車の「エディション1」が付く。メルセデスのEVシリーズの一員であることを示す「EQ」の小さなバッジはフロント・フェンダーに備わるものの、EVだという主張は意図的にごく控えめだ。フロント・グリルのブラックパネル(オプション)を付けなければ、識別点は空力向上を狙ったリア・フェンダー前のスリットなどごくわずかで、エンジン車のG450dやAMG G63と簡単には見分けがつかない。ただしバックドアにスペア・タイヤの代わりの収納ボックスが装備されていればそれがG580である(パンク修理キットは後席下に収納される)。 見た目はこれまでのGクラスとほぼ同じだが、G580は4輪を個別の4基のモーターで駆動する純EVである。モーター1基(それぞれに低速ギヤ付き)の最高出力とトルクは147kWと291Nmで、システムトータルの最高出力は587ps、最大トルクは1164 Nmという。新型Gクラスの中では最強である。専用に改造したラダーフレームの中に納まる駆動用バッテリー容量は116kWhで、一充電走行距離は530kmと発表されている。ただしその分車重は3120kgと3トンを楽々超える。同時にマイナーチェンジを受けたV8ツインターボ搭載のAMGG63ローンチエディション(2570kg)と比べてもさらに500kg以上重い。にもかかわらず、0-100km/h加速は4.7秒という(G63は4.3秒)からそら恐ろしい。 ◆次元が違う 話題のGターンは4基のモーターを独立制御することによって可能となった必殺技だ。戦車のようにキャタピラー(履帯)を備える車両が左右の履帯を逆回転させることによってその場で旋回するのと同じ、いわゆる「超信地旋回」である。起動するにはまずロー・レンジを選び、ドライブ・モードのロック・モードを選択、ダッシュ中央のGターン・スイッチを押し、ステアリング・ホイールを真っ直ぐ保持したまま回転したい方向のパドルを引きながらスロットルペダルを踏む、という具合だ。そのまま保持し続ければ2回転(720度)回って停止する。ただし、平坦な場所でなければ起動しないし、そもそも公道では使用不可とされている。 もちろん見物人をびっくりさせる一発芸のための4輪モーター4輪駆動ではない。独立して制御できるということは精密な駆動が可能ということ。タイヤが浮いてしまうようなラフロードでは非常に有効で、富士山麓のオフロード・コースでその優位性を思い知らされた。もちろんほかのGクラスにもロー・レンジと、センターに加えて前後アクスルにもデフロック機構が備わっているのだが、G580はちょっと次元が違う。たとえばホイールが完全に浮いてしまうような場面でも(内燃機関車ではデフロックしなければ反対側の車輪に駆動力が伝わらない)、何事もなく進むG580の安定感は抜群だ。 とはいえオンロードではやはりその重量が気になる。ゴツゴツした突き上げとは無縁ながら、場合によっては上下動が残る。ちなみにG580からG63に乗り換えたら、軽快敏捷な上にフラットな乗り心地にびっくりした。今回エンジン車はISG付きのマイルド・ハイブリッドとなり、G63はAMGアクティブ・ライドコントロールを搭載したことでさらに洗練されているのだ。 最強ともいえるオフローダーがEVなんて、心底驚くほかないが、万能だからこそ、くれぐれも無理をしないようご注意ください。 文=高平高輝 写真=望月浩彦 ■メルセデス・ベンツG580 with EQテクノロジー・エディション1 駆動方式 各輪モーター配置4輪駆動 全長×全幅×全高 4730×1985×1990mm ホイールベース 2890mm トレッド(前/後) 1660/1660mm 車両重量(車検証記載前後軸重) 3120kg(1520/1600kg) モーター形式 交流同期モーター×4 モーター最高出力(総合出力) 147ps/3542-10328rpm×4(587ps) モーター最大トルク(総合トルク) 291Nm/111-3542rpm×4(1164Nm) 変速機 2段AT 電池総電力量 116kWh 一充電走行距離(WLTC) 530km サスペンション形式 前/後 ダブルウィッシュボーン/5リンク ブレーキ 前後 通気冷却式ディスク タイヤ 前後 275/50R20 113V 車両価格(税込) 2635万円 (ENGINE2025年2・3月号)
ENGINE編集部