なぜ男性は60代で老け込み、女性は元気なのか?医師が教える「意外な原因物質」の正体
和田:あとは、60代以降の体力の低下もまた、男性ホルモンの減少がその一要因と言えます。男性ホルモンは筋肉の成長に寄与するホルモン分泌にも関わっていますから、それ自体が減少すると、筋肉量が落ちてしまいます。筋肉が落ちれば、自然と代謝が減るわけですから、脂肪がついて太りやすくなるわけです。結果、体力の低下を招きます。 ● 元気ホルモンに呼び替えるべき!? 「男性ホルモンは神様の贈り物」 中尾:なるほど。コミュニケーションにも男性ホルモンが関係しているのですね。 和田:ええ、そうなんです。男性に比べて、女性の場合、男性ホルモンの問題は事情が変わってきます。私はそれを「神様の贈り物」と言っているのですが、生物学的に見れば、出産や子育てなどの大変な苦労の末に、閉経を迎えたのちには、女性は男性ホルモンが増えてくるのです。 そうすると、女性はむしろ年を取ってから意欲的になったり、人付き合いが盛んになったりするんですよ。ですから年配の方向けの団体旅行の参加者は大概は女性ですし、お茶会にしろ、いつまでも女性は仲の良い友人たちで集まったりしますね。
中尾:男性ホルモンが、60代以降の人間にとっては、ある意味では元気の源になっているということですね。 和田:男性ホルモンは、実は「元気ホルモン」に呼び替えたほうがいいのではないかと思います。これは、男性ホルモンの知見を日本にいち早く導入した医師である熊本悦明先生の発案でもあります。 熊本先生は、90歳を超えてずっと現役で、2022年に94歳でピンピンコロリで亡くなりましたから、やはり長寿で元気であるということと関係しているのかもしれません。また、熊本先生は、プロスキーヤーで80歳でエベレスト登頂にチャレンジ、成功しエベレスト最高齢登頂者となった三浦雄一郎さんの主治医でもありました。 ● 血糖値やコレステロール値よりも 男性ホルモンの不足に注目せよ 和田:三浦さんは76歳のときにスキーで転倒し、骨盤と大腿骨の付け根を骨折してしまい、著しく筋力が低下したことがあったそうです。その際に熊本先生が男性ホルモンのひとつである「テストステロン」の注入による治療を行いました。