『虎に翼』“平等”は持てる者の理想に過ぎない? 伊藤沙莉×高橋克実の対話から見える現実
保守的な人々の思いを代弁する太郎(高橋克実)の存在も描く『虎に翼』
不特定の人々が出入りする喫茶店「ライトハウス」という公共の場で交わされた会話は、平等をめぐり、それぞれの立場から溝を埋めるものだった。昭和生まれの入倉が朝鮮出身者への憎しみを募らせるのは、単純に自身に向けられた悪意が理由だった。おせっかいな寅子は不平等に目をつむることができず、何とかしたいと思いながらも空回りしている状況だ。 これに対して、現実を知る太郎の言葉には重みがあった。寅子の悩みを「ご立派」と持ち上げつつ、「平等やら何やらに気を遣えんのは、学があるか余裕がある人間だけら。憲法が変わったんだすけ変われなんて言われても、全部ねえなったみてえでおっかねなってしもう。そんげ人間もいるでしょうて」と保守的な人々の思いを代弁した。 制度が変わっても人々の考えはすぐには変わらない。まして長い時間をかけて築かれた偏見や感情的な溝は、ちょっとやそっとでは埋まらないだろう。公正であろうとする寅子の努力は間違っていないが、現実の壁は厚かった。一同の会話を静かに聞いていた航一。「ごめんなさい」は誰の何に向けた言葉だったのだろうか。
石河コウヘイ