古い建売団地を平屋に 「高齢者に優しくファミリーにも対応」 埼玉・春日部で実証実験
東武不動産(東京都墨田区)は12月、埼玉県春日部市で展開する築40年超の建売住宅団地で新しいコンセプトに基づいた平屋建売住宅を公開する実証実験を始める。高齢者に優しい設計と同時に若いファミリー層にも対応しているのが特徴。都市政策の専門家は民間が開発した首都圏の団地の空き家問題を解決する1つの方策として評価している。 東武不動産によると、同社が東武線沿線で高度成長期に開発分譲した「旧東武団地」は築30~40年超が経過し、居住者、建物、機能の3つの「高齢化」に直面。空き家が散見されるようになったことから再生事業として始めた。実証実験をするのは、東武線春日部駅西口から1・8キロメートルの地点にある「藤の台パークタウン」(同市大沼)で、昭和58年から分譲が始まり、2階建て住宅が約160戸建っている。 このうち、空き家となった場所を同社が買い取り平屋住宅を建設。PCF(プレミアム、コンパクト、フラット)をコンセプトに、天井高4・5メートル、約66平方メートル、平屋で階段がなくバリアフリーな家を建て、12月に一般公開を始める。 「あえて2階建てでなく平屋のニーズがどれだけあるかを検証」(担当者)として、売り出し価格は団地住人や一般見学者の意見を聞き決定するとしている。 昭和の高度成長期、郊外の建売住宅は都心や駅近の住宅よりも手ごろな価格で購入できて人気だった。しかし、住人の高齢化による移動手段の不便さなどから転居する人が出始め、今後はさらに空き家が増えると予想される。 一方、若い世代は昭和世代よりも家族構成で子供の数が少なくなっていると同時に「勾配のある高い天井で開放感のある空間を好む傾向」(同社担当者)。そのため、PCFをコンセプトにした平屋建売住宅の実証実験を始めたとする。 団地の空き家問題などに詳しい東京都市大学(東京都世田谷区)の明石達生教授(都市政策)は「今回のの試みは、古い団地の空き家対策になると同時に、デザインの良い住宅が増えていけば景観が良くなることから、団地の雰囲気が明るくなり再活性化につながる」としている。(昌林龍一)