齋藤元彦氏が圧勝した兵庫県知事選挙 猛威ふるった“SNS選挙”とは
県庁では報復人事の嵐か
ある自民党県議は「調査結果が出る前に不信任案を出したのは間違いだった」と話し、前回の選挙で齋藤氏を推した維新も不信任案に賛成しており、動揺している。 取材してきたサンテレビジョン(神戸市)の幹部は「齋藤氏が返り咲いたので県庁内はパニックになる。特に、人事派と言われる齋藤氏の政策に批判的だった財政派の幹部は報復人事を恐れ、退職者も続出するのでは」とみる。 5期の長期政権だった井戸敏三元知事の流れを汲む旧井戸派は県庁庁舎全面建て替えを打ち出していたが、齋藤氏は異を唱えていた。 齋藤氏は「応援してくれる方がSNSを通じて広がっていった。SNSのプラス面を感じた」と語ったが、効果的だったのは本人より立花氏のSNSだった。常軌を逸した応援に普通なら「やめてほしい」となろうが、齋藤氏自身が言えないことを言ってくれる「汚れ役」は大いに利用価値があった。 選挙戦の最中、県内29市中22市の市長が「稲村支持」を打ち出していた。稲村氏の演説会場にいた西宮市の塾経営者の男性は「齋藤氏は人が亡くなったことについて受け止め方が軽すぎる。かりにパワハラが原因ではないとしても心から悼んでいれば立候補などしないのでは」「有権者には文書問題の真相を知りたい気持ちが強い。とはいえ、10代の若者らがSNSを信じ込むのが非常に怖い。『石丸現象』から選挙の概念が従来とまったく違うものになってしまった」と話していた。稲村氏は淡路島や県北部などの郡部をこまめに回っていたが、終盤に大票田の阪神間に戻るのが遅すぎ、旧来の「どぶ板選挙」が「SNS選挙」についていけなかった。
粟野仁雄・ジャーナリスト