東大生が「103万円の壁は撤廃すべき」と断言するワケ。「学費、生活費を稼ぐ学生」を見捨てるのか
大学を休学して学費や生活費を稼ぐ学生も
「それならばたくさん働けばいい」と考えるかもしれませんが、そもそも大学は研究機関であって、大学生はいうなれば研究者の卵です。それが目先の生活のためにアルバイトに追われ、ろくろく大学に通えないとなれば、それは国の教育体制としていかがなものでしょうか。 これまで私が取材してきた東大生の中でも、親からの支援を一切頼れず、学費と生活費を自弁するために大学を休学してアルバイトに奔走しているケースが2つもありました。 日本トップクラスの大学である東京大学のひざ元で、こんなことが現実に起きていることに違和感を覚えます。 ちなみに以前私が東大学費値上げに関する記事を書いたところ、「東大生はバイトの時給が高いからいいだろう」と的外れな意見を多数いただきました。 確かに、バイトの時給は東京都の最低時給と比べても高いことが多い。例えば、家庭教師ならば時給2500~3000円程度が相場ですし、塾でも2000円程度が一般的。これだけ見れば、いくらでも稼げるように見えてしまいます。
控除額を増やすことは「未来への投資」になる
ですが、実情はそうではありません。塾や家庭教師は実働時間が極端に短いためです。多くても3時間~4時間程度の勤務になるので、頑張っても1万円に届かないケースが多い。 「稼ぐ」という観点で見るならば、むしろ朝から晩までコンビニやスーパーで働いたほうが実入りはよい。 「東大生だから少ない時間で高時給をもらい、残った時間で勉強できる」なんて都合のいい話はなく、貧困にあえぐ大学生は朝から晩まで働きます。 これを解消するためには、「103万の壁」の撤廃と、時給の底上げが必要ではないでしょうか。控除額を増やして、手取りを増やし、学生が自分の力で生きていけるようにする。 そうすれば、経済的な観点から進学を諦めていた学生にもリーチできるようになるため、より大学の多様性が確保されるように思えます。 少なくとも、首都圏生まれの進学塾に通える程度には資金投資が可能なミドルアッパークラス出身者ばかりのつまらない現状から脱却する一歩は見えてくるでしょう。 未来のためには若い世代、とりわけ教育関連への投資が必要です。今回の所得関連の話題も、広い意味では未来への投資と言ってもいいでしょう。学生たちが勉強に専念できるようにするためにも、控除額の増大と最低時給のアップがなされてほしいものです。 ―[貧困東大生・布施川天馬]― 【布施川天馬】 1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa)
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