<私の恩人>川平慈英、盟友・今井雅之さんへの誓い
俳優、タレント、スポーツキャスターと幅広く活動する川平慈英さん(53)。主演映画「手をつないでかえろうよ~シャングリラの向こうで~」が公開中ですが、この作品は、学生時代からの盟友で、昨年5月に大腸がんで亡くなった今井雅之さんが当初は主人公を演じる予定でした。今井さんの病状が悪化し、亡くなる1ヵ月前に川平さんに役を託す形となりました。「雅之が言っていた『生きて、生きて、生きまくれ』という言葉が、今、改めて心に響いています」と、今井さんへの思いを一つ一つ丁寧に言葉に置き換えていきました。
高校を卒業して、アメリカのテキサス州立大学に行ったんですけど、そこでサッカー選手として“戦力外通告”を受けまして…。そこからまた他のアメリカの大学チームに入るパワーもなくて、失意のまま、東京の大学(上智大学)に編入したんです。 夢破れて、いわば、やさぐれていた時、たまたま友達が持ってきてくれたのがオーディションのチラシだったんです。僕の大好きな映画「フェーム」のミュージカルバージョン、舞台が上演されると。サッカーもダメになってしまったし「えーい、やってしまえ!!」と勢いでオーディションを受けることにしたんです。 サッカーからミュージカルへと、すごいハンドルの切り方なんですけど(笑)、ま、今から考えると、伏線みたいなものはあったのかもしれません。中学、高校とサッカー漬けではあるものの、練習が少しだけオフになるシーズンに友達とミュージカル部みたいなのを作って、年に1回の文化祭で出し物もしてたんです。そして、そもそも、沖縄の人間ですから、人が集まったら歌うし、踊るし、どこか、下地というか、DNAというか、そういうところには“人前で何かをしたい”ということはあったのかもしれませんね。じゃないと、いきなりオーディションなんて、普通は行かないですもんね(笑)。 ただ、基本的にはサッカー一筋の人間ですから、当然というか、他の参加者と違って、何の素地もありません。自分でも本当によくやったなとも思うんですけど、ハッタリで好き勝手に踊ったんです。すると、後日、合格通知が届きまして(笑)。 そこで僕を評価してくれたのが、今回の映画でも監督をしている演出家の奈良橋陽子さんなんです。陽子さんいわく「濃くてうざいところ。そして『オレだけを見てくれ!!』という根拠のないアピールがおもしろかった」そうです…。 ただ、そんな状況で入りましたんで、他の人は基礎もしっかりしている中、僕は何も知らない。普通はここで大きなショックを受けるのが一般的かとも思うんですけど、自分でも、とんでもない野郎だなと思うんですけど、まったくめげなかった!それどころか「オレがナンバーワンだ!オレを見てくれ!」と自信が倍増、覚醒してました(笑)。 ま、普通の演出家だったら張り倒されてたでしょうけど、陽子さんはそんな僕をずっと見守ってくれてたんです。好きなだけ発散させて、受け止めてくれたと言いますか…。そういう意味では、オーディションで拾っていただき、好きにやらせてくれた奈良橋陽子がいなかったら、今の僕はなかった。それは断言できます。