日銀の国債買い入れ減額は本格的な量的引き締め(QT)の始まりではない
本格的な量的引き締め(QT)開始は来年半ば以降か
他方、植田総裁は4日の国会答弁で、「長期金利が急激に上昇する場合には、市場における安定的な金利形成を促す観点から機動的にオペを実施する」と述べている。長期国債利回りが大きく上昇すれば、国債買い入れを増加させて、利回りの上昇を抑えることもある、という考えを示しているのである。このことは、長期国債買い入れは先行き減額の方向にあるとしても、現時点ではなお減額、増額双方向に修正する柔軟な枠組みであることを意味しているだろう。 仮に、日本銀行が6月13、14日の次回金融政策決定会合で、国債買い入れ減額を決めるとしても、残高削減の月間ペースなどに目標値を設定したうえで、残高削減を進める本格的なQTの開始はまだ先のこととなろう。 日本銀行は、短期金利の引き上げが相当分進み、「金利政策の正常化」が一巡した後に、本格的なQTを含めた「バランスシート政策の正常化」を始めると引き続き見ておきたい。それは来年半ば以降となるのではないか(コラム「日銀追加利上げと量的引き締めはどちらが先か?」、2024年5月21日)。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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