気候変動で人生が変わってしまう子どもたち。子どもの貧困とのつながりとは?
「サイクロンや干ばつや水害など、地域によって気候変動の現れ方はさまざまですが、昔は時々起こる程度のものだった自然災害が今では頻繁に起きていて、気候変動は日常になってしまっています」と、榮谷さん。 ユニセフでも、以前は緊急援助として自然災害に対応していましたが、それでは追いつかず、現在は通常業務の中に気候変動への対策を組み込み、対応に当たっているそうです。
「水がない」から始まる負の連鎖で、人生が変わってしまう子どもたち
榮谷さんとメザーズさんが暮らすケニアでも、2020年10月からの2年半、ほとんど雨が降らない雨季が5回続き、ここ40年で最悪の干ばつが起こりました。
被害を受けたのは、ソマリア、エチオピア、ケニアなど「アフリカの角」と呼ばれるエリアにまたがる東アフリカの国々。ケニアの首都ナイロビは経済的に発展を続けている東アフリカの中心都市ですが、国土の北側・北東側の国境付近は乾燥地域が広がっており、干ばつの影響を特に受けたのがこのエリアの人々でした。
「水がなくなることにより、飢えや乾きという直接的な被害があるのはもちろんですが、そこから派生してさまざまな問題に巻き込まれてしまう"負の連鎖"が起こっています。最も影響を受けてしまうのが、貧困層の子どもたちです」と、メザーズさん。 現在、約23億5000万人いる世界の子どものうち、気候変動のリスクが非常に高い地域に住んでいる子どもの数は約10億人にものぼると言われています。
気候変動から生まれる負の連鎖とはどういうことか、ある少女の体験から見ていきましょう。 シャーリーンさんは、ケニア北西部にあるトゥルカナに暮らす14歳。母親はなく、2つ年下の従姉妹と叔母との3人暮らし。干ばつの影響で叔母は病院での仕事を失いました。 水がなくなることで、まず困るのが食糧です。作物を育てようにも育たず、家畜のヤギも死んでしまいました。市場に出回る食べ物も少なく、通貨の価値は下がっているのに物の値段はどんどん上がって買うこともできません。そんな中、シャーリーンさんの家に遊牧生活をしていた親戚家族がやってきて一緒に暮らすことになりました。干ばつのせいで遊牧に必要な牧草地が消滅してしまったのです。養わなければいけない人が増え、夕飯が食べられない日が続きます。 それでも日々を生きるためには水を得ないといけません。シャーリーンさんは遠くの川へ水を汲みに行くため、学校を休むようになりました。友人の中には2時間かけて川に行き、20Lもの水を持って戻って来ないといけない子もいます。その道中で性暴力に遭う子どももいました。