置き去りの「議員定数削減」 臨時国会でも議論されず
臨時国会の会期末まで残り2週間、成長戦略を具体化するための「産業競争力強化法案」が衆議院で可決されるなど、さまざまな重要法案が審議されています。しかし、その一方、重要な改革であるにもかかわらず、臨時国会でまったく議論されていない問題があります。それは選挙制度の抜本的な改革、衆議院の定数を大幅に減らす「議員定数削減」の問題です。 [図表]衆議院と参議院の現在の議員定数は?
通常国会で「抜本改革」は進まず
議員定数削減とは、いわば国会議員自身による「身を切る改革」です。衆議院の定数は、公職選挙法によって480人(小選挙区300人、比例代表180人)と規定されています。昨年秋、この定数の削減について「(消費税率の引き上げで)国民に負担増を求める以上、議員自らも身を削る必要がある」と自民党・公明党・民主党の3党が合意。議員の側から言い出して定数削減を約束したのです。 3党の合意文書では、議員定数の削減を「次期通常国会終了までに結論を得た上で必要な法改正を行う」とされていました。ところが、その通常国会で決まったのは、衆院小選挙区の「一票の格差」を是正するため、議席数を5つ削減して定数は増やさない「0増5減」という調整策だけでした。消費税率を来年4月に8%に引き上げることは正式に決まりましたが、国会議員自らが「身を切る改革」は置き去りにされたままなのです。
そもそも定数削減は必要なのか
しかし、定数削減が本当に必要なのかについてはいろいろな意見があるのも事実です。たとえば、財政の緊縮化のために削減すべきという意見がありますが、仮に衆議院の定数を180人減らして300人にしても、その削減効果は約120億円。今年度予算案の0.01%にしかすぎず、増大する社会保障費がまかなえるわけではありません。 また、外国に比べて国会議員が多いともいわれますが、人口に対する国会議員の割合でG8諸国と比較してみると、日本が17.7万人に1人なのに対し、イギリスは4.4万人で日本の4倍、フランスやイタリアも日本の3倍です。そもそも、議員の定数を減らすことで国会が効率化するとは限りません。むしろ、小政党が審議に関与できなくなるなど、細かな民意を拾い切れなくなったり、国会の機能が弱体化する可能性もあります。また、議員の数が減ることで官僚依存が強まり、役所の力が増大すると心配する意見もあります。 では議員定数削減は必要ないのでしょうか。