虐待経験者の声、出版 児童養護施設出身者と元厚労官僚がタッグ
児童養護施設出身者の成人を祝うボランティア団体「ACHAプロジェクト」の山本昌子代表は8月21日、虐待を受けたこどもの声を集めた「親が悪い、だけじゃない」(KADOKAWA)を出版すると発表した。 自身も施設出身の山本代表は、2016年から施設出身者を対象に成人式の振り袖を贈る活動を始めた。都内の空き家を活用した若者の居場所づくりも実施。こども家庭庁の審議会委員も務めている。 23年には虐待を受けて育った若者に密着したドキュメンタリー映画「REALVOICE」(リアルボイス)を監督として制作。45都道府県から虐待経験のある若者70人が出演して話題となった。 同著は、映画に出た19~24歳の男女5人に改めてインタビューし、自立とともに襲ってきた孤独や、成長して新たに自覚した苦しみなどを記録した。現在は直接の被害を受けていなくても、虐待経験により今の社会で普通に生活することが難しい現状を訴える。 出版は、KADOKAWAで編集者を務める吉田真理さんが、リアルボイスを見て声を掛けたのがきっかけ。もともと吉田さんは厚生労働省のキャリア官僚で、児童虐待防止に関わる部署での勤務経験があるなど、社会的養護に関心が高く、書籍化を訴えたという。 同日に開かれたイベントで山本さんは、自身の生い立ちなどを語り、職員に大切にされた経験が生きる原動力だと強調。「手厚い支援で救われず、不適切な支援で助かったと感じるこどももいる。どんな人間関係を築けるかが重要」と話した。 その上で「虐待問題にプロとして関わる人にぜひ読んでほしい。一般の人には覚悟を持ってこの現実を知ってもらえれば」と語った。