次期韓国大統領選に意欲? パン・ギムン氏の国連事務総長としての評価は
批判的な見方も
さまざまな問題に対処してきたパン氏ですが、必ずしも白星が多いとはいえません。批判も多く聞かれます。 2007年10月、米紙『ワシントン・ポスト』はパン氏のもとで国連には韓国人職員が急に増えたと伝え、情実人事と批判しました。それによると、パン氏が就任する直前に54人だった韓国人職員は、その就任から1年たたない間に66人になったということでした。 ただし、国連への分担金の拠出額で韓国は11位です。より所得の低いフィリピン出身の国連職員がこの年759人だった(フィリピンは英語圏なので言葉の壁が低い)ことにみれば、この人数自体は大した数でないともいえます。また、歴代の事務総長の中にも、第4代のクルト・ワルトハイム(オーストリア)、第5代のハビエル・ペレス・デクエヤル(ペルー)、第6代のブトロス・ブトロス=ガーリ(エジプト)など、就任後に自国人スタッフを増やした例はあります。 しかし、国連改革を掲げたパン氏のもとで、国連の透明性がむしろ悪化したという批判もあります。2010年に退職した、国連の活動を監査・評価する内部監査部(OIOS)の責任者だったインガー・ブリット・アレニウス氏は、パン氏が自ら管理する調査部門を設置しようとしたことで、国連内の汚職を調査するOIOSの独立性が脅かされたと証言。 アレニウス氏によると、彼女がもつ人事権にまでパン氏は干渉したといいます。さらに、国連職員の労働組合は、パン氏が団体交渉権を制限したと批判しています。 外部での活動に目を向けると、「成果を挙げてこなかった」という批判もあります。パン氏は国連改革の一環として、平和維持活動(PKO)の組織やその運営の改革にも着手していました。しかし、コンゴなどでPKO要員による性的虐待などが頻発している状況は、ほとんど改善しておらず、その管理責任が問われてきました。 また、その在任中には、リビアやシリアなど中東だけでなく、ウクライナなどでも戦火が上がり、南シナ海などでは領土問題が緊張を高めてきましたが、これらの解決に「リーダーシップを発揮できなかった」ともいわれます。先述のシリアをめぐる国際会議は、シリアの当事者間だけでなく米ロ間の対立が解消されなかったことで、何の成果もあげていません。2016年5月、英誌『エコノミスト』はパン氏を「活気がなく、形式主義的で、大国に立ち向かうのを嫌がる」と評しました。