箱根から「ノーベル賞」東大大学院29歳“ベテラン学生” メルカリシューズで最初で最後の箱根駅伝…来春から研究員
関東学生連合は2年ぶりにオープン参加する。29歳の“ベテラン学生”古川大晃(東大大学院4年)は、予選会(10月19日)にフリマアプリの「メルカリ」で購入した6万8000円の超軽量厚底シューズで出場し、3度目の連合チーム入りを果たした。過去2度は登録されるも出走ならず。連合チーム主将の大任も担う古川は来春、国立の京都工芸繊維大に博士研究員として就職し、ノーベル賞を究極の目標に掲げる。高校を卒業して11年目で迎えた最後のチャンス。強い覚悟を持って箱根路に臨む。 立川から箱根への道を懸命につないだ。ハーフマラソンを一斉スタートする東京・立川市での予選会。古川は外国人留学生と並んで最初の1キロを先頭で通過した。後半も踏ん張り、個人60位でゴールした。 「10キロ地点で全選手の中で僕が一番、苦しかったと思います。でも、最後まで粘ることができた」。連合に5番手で選出されたレースを静かに振り返った。 予選会10日前に29歳になった“ベテラン学生”。熊本・八代高卒業後、1浪して熊本大に入学。その後、九州大大学院、21年に東大大学院に進んだ。22、23年箱根駅伝で連合の登録メンバー16人に入ったが、出走ならず。来春、京都工芸繊維大に博士研究員として赴任する古川にとって今回がラストチャンスだ。 予選会ではアディダスの超軽量厚底シューズのエヴォ1で臨んだ。性能だけを重視し、耐久性を度外視した設計で“寿命”はマラソン1回分。定価8万2500円。多くの意味でスーパーシューズだ。「奮発してメルカリで6万8000円で買いました。偽物だったり、傷んだりしているリスクもありましたけど、新品が届いて良かった」と笑った。 高校時代には大東大、専大、拓大などから勧誘を受けたという。「学業や経済面など考えて国立大学の方がいいと両親や先生に説得されて、渋々、そっちの道を選びました」と正直な思いを明かす。高校卒業から11年目。「本当に不思議。強く望んでいたら箱根を走るチャンスが巡ってきた」 来春からは研究員として就職する。九州大大学院時代の研究テーマは追尾走。簡単に言えば「人の後ろを走るとなぜ楽に感じるのか?」。古川は「将来、スポーツ科学畑からノーベル賞を出したい。大口をたたきましたけど、しっかり研究していきます」と笑顔で話す。 「3度目の正直」ではなく「11年目の正直」。長かった青春の最後として新春の箱根路ほど、ふさわしい舞台はない。(竹内 達朗) ◆古川 大晃(ふるかわ・ひろあき)1995年10月9日、熊本・八代市生まれ。29歳。八代六中時代はバスケットボール部所属。八代高入学と同時に本格的に陸上を始める。1浪を経て熊本大教育学部に進学。九州大大学院人間環境学府を経て、2021年に東大大学院総合文化研究科広域科学専攻博士課程へ。自己ベストは5000メートル14分3秒20、ハーフマラソン1時間4分10秒、マラソン2時間16分14秒。176センチ、60キロ。
報知新聞社