北朝鮮の“資格”で問題提起 「国連」除名の可能性はあるのか
国連加盟国に対する「除名」
それでは、国連決議などに従わない国に対して、国連はその資格を取り消すことができるのでしょうか。 国連の前身である国際連盟では、連盟の約束や義務に違反した国に関して、理事会の全会一致で追放されることが定められていました。この規定に従って、1939年にはフィンランドに侵攻したソ連が除名されました。 現在の国連では、「憲章に掲げる原則に執拗に違反する加盟国は、安全保障理事会の勧告に基づいて、総会が除名することができる」(第6条)と定められています。国際連盟と比べて慎重な手続きですが、国連も加盟国の除名を否定していないのです。 ただし、実際に除名処分を受けた国はありません。これまで、国連から最も厳しい制裁を受けた国の一つに、アパルトヘイト(人種隔離政策)時代の南アフリカがあります。南アフリカに対しては、有色人種のあらゆる権利を制限していた人種差別的な体制を理由として、1974年から1994年まで国連によって経済制裁が敷かれたうえ、国連総会は南アフリカ代表権を否認しました。つまり、南アフリカ政府は国連での会議などに参加するという加盟国としての権利を一時制限されたのです。これは南アフリカの国際的孤立を象徴しましたが、この際にも「除名」という重い処分はありませんでした。 南アフリカほどでなくても、加盟国の義務である分担金を滞納したアフリカの貧困国などに対する制裁も、総会での投票権の停止など、権利の一時制限が一般的です。
北朝鮮の「除名」はあるか
国連の制裁対象になっている国に対して、制度として「除名」はあるものの、これが実際に適用されることはありませんでした。そこには、大きく二つの理由があげられます。 まず、安全保障理事会のなかに、問題行動をとる国と友好関係が深い国がある場合、「除名」は実際にはほぼ不可能になります。南アフリカの場合、白人政権と旧宗主国のイギリスなどが影で友好関係を維持していたことは、国連からの追放を免れる一因となりました。 次に、「除名」によってその国が問題行動を改めるかが不明なことがあります。「除名」には確かに大きなインパクトがあり、バチカン市国など国連に自発的に加盟していない国はともかく、自らの意思で国連に加盟しながら、これから除名された場合、その国は国際的にもはや「一人前」とはみなされにくくなります。しかし、問題の国がもともと国際的に孤立していれば、「除名」の影響は必ずしも大きくありません。さらに、国際的な舞台からも排除されれば、行動を一層エスカレートさせたとしても、それを制止することがさらに難しくなります。そのため、「除名」が常に問題解決につながるとはいえません。