「父が孤独死した“10LDKの大豪邸”」に娘たちが取材カメラを入れた理由 “遺体の状態”によって、死の受け入れ方は変わる
父が自ら命を絶った駅に降りるたびに、二見氏は後悔の念に襲われる。 「親父は死ぬときどんな感じだったのか、どんな気持ちで死んでいったのか、本当は家族に囲まれて死にたかったんじゃないかと今でも考えますし、僕は死ぬまでこの後悔を抱えながら生きていくはずです。 僕と同じように孤独死の現場に立ち会った遺族の方々も、“なんで何もしてあげられなかったんだろう”と後悔していることが多いと思うんです。できれば、そういう気持ちを思い出してほしくない。だから、孤独死の現場は基本的に動画にしていないんです」
では、なぜ今回の現場は動画や記事として発信することにしたのか。 それは、もともとYouTube用の撮影をする予定で事前に許可をもらっており、カメラを持って現場に訪れたその日に、孤独死であることを知らされたからである。つまり、遺族も現場を記録として残すことをいとわなかったのである。それには、大きな理由があった。 ■死後1カ月が経過した現場 イーブイが過去に片付けをした、死後1カ月半が経過した孤独死の現場。部屋の中はガランとして整理されているものの、家は腐敗臭に包まれていた。その臭いは実際に嗅いだことのある人にしかわからない、ほかに形容しがたいものだという。
また、その強力さゆえ、5分もその場にいれば、服から髪の毛、鼻の粘膜まで、全身に臭いがこびりつく。その状態で車に乗ってしまった日には、車内にもしばらく腐敗臭が染みついてしまうくらいだ。 遺体があった場所には体液が染み込み、そこは人の影があるかのように真っ黒になっている。ただ、孤独死の現場に初めて入るスタッフたちは、ビジュアルではなく臭いにこたえ、その場にいられなくなってしまうという。 しかし、今回の現場は、遺体のダメージが著しく小さかった。次女が落ち着いた様子でこう話す。
「怖くて全身を見ることはできなかったんですが、手の先が真っ黒になっていたのは見えたんです。ただ、ドロドロという感じではなく、やせ細った、ミイラのような印象でした。クーラーと扇風機の両方が付いたままだったので、本当に日常生活の中で急に倒れて亡くなったんだと思います」 大きなトラブルもなく、作業は予定通り日が暮れる前に完了した。すべての部屋が空っぽになった実家を前にしても、姉妹はやはり落ち着いていた。親の孤独死をすでに受け入れることができているようだ。