“タイプの人”でもない、ただの知り合いが「夫」に。今だからわかる、ありのままの私をよしとしてくれる人の価値【住吉美紀】
フリーアナウンサーの住吉美紀さんが50代の入り口に立って始めた、「暮らしと人生の棚おろし」を綴ります。 【画像】夫と住吉さんの距離がゆっくりと縮まっていく 元カレ行脚で全力でバットを振り、見事ストライクアウト、清々しいほどの“婚活ゼロ地点”に立っていた。できることはし尽くしたから、力みは抜けていた。まさか、そこから1年も経たないうちに、結婚しているとは。 実は、夫とは、その前の年に既に出会っていた。前述の“ヒドイ彼”と一緒に参加した、とあるホームパーティで。“ヒドイ彼”が、人のお宅に招かれているにも関わらず、連絡のないまま数時間遅刻するという失礼をしたため、その日の私は頭から火を噴きそうほど怒っていた。そこに同じく招待されていたのが夫だった。 食事をしながら、話は独身だった夫の婚活話に及んだ。主催者は、夫に知り合いを何度か紹介しているけれど、なかなか2回目以降会おうとしないんですよ、と漏らす。夫は「結婚はしたいんですけどねぇ~」となんだか、のらりくらり風(に私には聞こえた)。 既に“ヒドイ彼”という無責任な独身男性にイライラしていた私の怒りの炎は、一瞬にして独身男性全体に燃え広がり、なぜか、初対面の夫に、「どうせホンネは独身貴族を楽しみたいんですよね。相手の女性に失礼じゃないですか。本気で結婚する気なんてないって、認めらたらどうです?」と、まるで喧嘩を売るように吐いてしまった。 夫は怒るでもなく「いやいや、本当に思ってますよ」と言う。 私「本当に、出会う努力をしていますか?」 夫「はい」 私「あら。じゃあ、私が設定したら、合コンしますか?」 夫「もちろん、ぜひお願いします」と、これまたなぜか、売り言葉に買い言葉のように、私の友人と夫の職場の仲間で合コンをすることになっていた。 その頃、私の周りでは、3、40代の結婚したい友達がたくさんいた。仕事はバリバリとこなし、見た目も内面も素敵なのに、相手は探し中という女性がいかに多いことか。出会いの場がないと言う。私は自分だけではなく、そんな友人たちのためにも、パートナー候補を見逃すまいと日頃から目を光らせていた。 夫は悪い人ではなさそうだし、真面目に仕事をして真っ当に生きているようだし、本気で相手を探しているのならば友人に紹介してもいいかも、と思った。 2ヵ月後。8人で、合コンが決行された。私はその頃一応まだ“ヒドイ彼”と付き合っていたので、場の司会進行役に回った。夫とどの友人とをくっつけたいかもイメージできていた。夫をその友人の正面に座らせ、「ふたりともジャイアンツ・ファンですよ」とか「ふたりともお父さまもスポーツ観戦好きですよ」とか、「実家は」「職業は」とまるで仲人のように、互いにアピールしそうなポイントをタイミングよくご案内した。会話もそれなりに弾んだし、会全体も楽しく運んだ。