“タイプの人”でもない、ただの知り合いが「夫」に。今だからわかる、ありのままの私をよしとしてくれる人の価値【住吉美紀】
しかし結局、夫と友人含め、その会からはカップルは誕生しなかった。(ちなみに夫とくっつけようとした友人は、その後、義理姉となった。数年後、私の紹介で、義理の兄と結婚したのだ。ということで、私の読みは遠からずと言えるのか) その後、夫とは半年以上、ただの知り合い同士だった。当時、夫はホテルのレストランで働いていたので、「着物のまま軽食を食べたいのですが、今、ラウンジの広い席って空いてますか?」と連絡して、着付けを一緒に習っていた友人と食事に寄ったり。夫から「実家の田んぼでお米を収穫したのですが、日本料理を習っている住吉さんならば、食べてみたいですか?」と連絡をもらい、お米を送ってもらったり。 そんな風に知り合いとして時折やりとりしているうちに、とても優しい、気遣いのできる素敵な人なのがわかってきた。しかし私にとって、それまで好みと思い込んできた「タイプの人」ではなかったので、下心は抱かなかった。 そんなある日、夫から、メールが来た。ベランダの隅でハトの卵が孵ったようで、雛を発見した、どう対処したら良いか知ってますか、という内容だった。ツバメの巣はわかるが、ハトの巣は見たことがない。興味の湧いた私は、どのくらいの大きさですか、雛はかわいいですか、どんな巣ですかと、次々に質問。夫からはテンポよく、観察した内容や、ベランダの雛を捉えようとした写真などが送られてくる。 最初は、幸福のサインじゃないですか、かわいくていいな、餌をあげたほうがいいのかな、などお気楽にやりとりしていたのだが、ネットで調べてみると、自分で触ると危ないとか、糞害がすごいとか、ちゃんと対策をしないと繰り返し産みにくるとか出てきた。 しばしの協議の結果、「巣立つまで様子を見て、マンションの管理会社に相談することします」と夫。「いずれにせよ、検索してみても『ハトが巣を作ると幸運を運んでくる』と出てきますよ。何かいいことあるかもですし、がんばってください」と私。 その日を機に、暮らしの軽い話題について、チャットのように、ちょこちょことやり取りするようになった。
住吉 美紀