新型「パニガーレV4 S」に魅せつけられたトップグレードの威力 ドゥカティのスーパーバイクは第7世代へ
ドラスティックな変更を受けた、フレームとスイングアーム
「パニガーレV4 S」は、進化の度にフロントフレームと呼ばれるエンジンの上にマウントするシャシー剛性を落としてきましたが、今回のモデルチェンジにおいてもシャシーの変更はとても重要なポイントになっています。
いま考えると、初期型のフレームは硬過ぎたのでしょう。初期型のフレームには穴(肉抜き)が無く、翌年に登場した「パニガーレV4 R」から拳大の穴が開き、2020年モデルの「パニガーレV4 S」でも同形状のフレームが採用されました。 今回、フレームの肉抜きは信じられないほど大胆になっています。フレームは40%、スイングアームは37%も横剛性を落とし、スイングアームは理想的なフィーリングを得るために形状も変更。これまで最高峰のスーパーバイクは「999」以降、片持ちスイングアームを採用してきましたが、このモデルから両持ちに。これはドゥカティコルセからの要望だったそうです。 このシャシーのバランス追求は多くのメリットをもたらしてくれます。減速時にフロントフォークが深くストロークし、サスペンションが効率よく路面追従できない時でもフレームとスイングアームがフレキシブルに仕事をしてくれます。 また深いバンクでのライントレース性、立ち上がりでのスロットルの開けやすさ、タイヤが減ってきた時の安定性、さらには旋回速度の向上など、サーキットにおけるすべての領域でその効果は感じられると言って良いでしょう。
そして、剛性を落としたシャシーと進化した電子制御のマッチングがまた素晴らしいのです。特に僕が感銘を受けたのは減速方向の制御で、すぐに市販車として初めて採用されたレースeCBS(エレクトリック・コンバインド・ブレーキシステム)の虜になってしまいました。 ヴァレルンガサーキットのバックストレートは5速、約270km/hくらいからブレーキを開始し、2速までシフトダウン。レースeCBSは、フロントブレーキをかけると自動でリアブレーキを効かせ、制御してくれます。これがいつもより短い区間で減速できている実感をもたらしてくれるのです。 さらには足先がブレーキペダルから離れてしまいがちな左カーブや、イン側の足を出しての進入でも効果を発揮してくれます。また、いつもより確実に止まれるため、立ち上がりではより大胆なスロットル操作が可能になるのです。 このeCBSやABSを始め、電子制御は6軸IMUを使い、ドゥカティコルセが開発。トラクション、ウィリー、スライド、エンジンブレーキコントロールなどの各制御は、素晴らしく視認性の高いメーター内で細かく調整できます。 もちろんクイックシフトや、機構を一新したオーリンズ製の電子制御式サスペンションもスポーツライディングを完璧にサポートしてくれます。