地震保険だけでは全壊時の住宅再建は不可能! 地震被害に100%備える「上乗せ特約」「費用保険金」とは?
高額な保険料を支払ってでも、地震保険・上乗せ補償特約が必要なのか?
1981年(昭和56年)5月31日までの建築確認において適用されていた「旧耐震基準」に比べ、それ以降の耐震基準(新耐震基準)は格段に耐震性が向上しています。 また、住宅性能評価制度における耐震等級では、現在の建築基準法の水準を等級1、等級1で耐えられる地震力の1.25倍の力に対して耐えられる等級2、1.5倍の力に耐えられる等級3があり、最近では注文住宅で耐震等級2や3の建物は当然のようになり、建売住宅でも増えてきました。 築浅の一戸建てでは、地震の揺れによる損壊のリスクは確実に減ってきたと言えるでしょう。 一方、能登半島地震では、輪島市で地震による大規模な火災が発生、焼失区域の面積は約50,800㎡(東京ドーム約1.1個分)、区域内に含まれる建物の数は約300棟と推定されました※。 一戸建てで怖いのは地震による火災であり、特に首都圏などでは住宅密集地域も少なくなく、延焼のリスクをより考える必要があります。 知っておきたいのは、火災保険では、地震を原因とする火災による損害は原則、補償されないことです。周囲から延焼した場合も同様です。自宅が出火しなくても、周囲から延焼すれば火災保険からの補償は原則受けることができないのです。地震による火災の損害を補償するのは地震保険であり、また地震危険等上乗せ特約を付帯していれば補償対象となります。 ※出所:国土交通省・国立研究開発法人 建築研究所「令和6年(2024年)能登半島地震による建物等の火災被害調査報告(速報)」(令和6年1月12日、令和6年1月19日修正)
地震による火災に備えるなら、火災保険の「地震火災費用保険金50%プラン」も
地震保険に火災保険の保険金額の50%で加入し、火災保険に「地震危険等上乗せ特約」を付帯すれば、地震が原因の火災による損害に対しても100%補償が可能になりますが、もう一つ方法があります。 火災保険では、地震を原因とする火災による損害は原則、補償されませんが、「地震火災費用保険金」というものが自動付帯されている商品が多く、それ以外の商品でも特約で付帯できます。 地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災により、建物は半焼以上(再調達価額の20%以上の損害)、家財は全焼(再調達価額の80%以上の損害)が対象と支払い条件は厳しめですが、通常、火災保険の保険金額の5%が支払われます。 一部の保険会社の商品では、この地震火災費用保険金を30%または50%に増やすことができます。50%に増やせば、地震等による火災に限定されますが、地震保険から50%、火災保険から50%で合計100%の補償が可能になります。 以下は、ある保険会社のホームページで行った試算例です。 (1)地震火災費用保険金を付帯しない場合 年間保険料(火災保険料+地震保険料) ・火災保険 1万8280円 ・地震保険 4万9950円 →合計6万8230円 主な補償内容※ ・住宅の種別:一戸建て ・住宅の所在地:東京都 ・築年数:5年 ・保険期間:1年 ・火災保険の保険金額:建物2000万円、家財700万円 ・基本補償:火災、破裂・爆発、風災・ひょう災・雪災、物体の落下・飛来等、(給排水設備の事故等による)水濡れ、盗難 ・地震保険の保険金額:建物1000万円、家財350万円(火災保険の50%) (2)地震火災費用保険金30%の場合 (1)に地震火災費用保険金特約を火災保険の保険金額の30%で追加 年間保険料 ・火災保険 3万6760円 ・地震保険 4万9950円 →合計8万6710円 (3)地震火災費用保険金50%の場合 (1)に地震火災費用保険金特約を火災保険の保険金額の50%で追加 年間保険料 ・火災保険 4万9070円 ・地震保険 4万9950円 →合計9万9020円 ※他に臨時費用保険金(損害保険金の10%、100万円限度)、失火見舞い費用保険金、残存物取片づけ費用保険金、損害範囲確定費用、仮修理費用、損害防止費用、セキュリティー・グレードアップ費用等を含む この地震火災費用保険金特約を「なし」から「50%」と加えることで、火災保険料が約3万円増えたので、この分が地震火災費用保険金特約(50%)の保険料に相当することになります。 この例では、特約料金が地震保険と比べ約0.6倍の金額になり、前述の地震危険等上乗せ特約の保険料と比べると、約半分ということになります(保険会社により保険料は異なります)。また、50%のプランにしても、特別な保険期間の制限はなく、1年超の長期契約(最長5年)が可能な点もメリットです。