《町内放送で「水道水を飲まないで!」》発がん性物質「PFAS」が水道水から大量検出された自治体、取水源のダムの「フレコンバッグ」が汚染の原因か 健康被害を懸念する声も
「米国に匹敵する厳格な基準を」
本誌「週刊ポスト」2024年11月1日号では、各都道府県などが実施した河川や地下水などの水質調査で、国の暫定目標値「50 ng/L」を上回るPFASが検出された全国285地点を一覧化して報じた。原田准教授は、今後もさらなる調査が必要だと指摘する。 「各都道府県などの調査では、水道水の元となっていない水域を対象としているケースも散見されます。本来は水道水と関連する水源地を含めて調査すべきです」 国は各都道府県や水道事業者などに対し、水道水のPFAS濃度の検査を9月末までに報告するよう要請した。結果は現在、環境省が集計中だ。 そこで本誌が47都道府県に対して国に報告した調査結果の開示を求めると、一部の自治体は国の公表に先んじて数値を回答した。その回答や公表資料などをもとに、直近で水道水からPFASが検出された地点を一覧化した。 本誌では検出地域のうち、「5ng/L」を超過した地点のみ表記した。原田准教授が指摘する。 「現在、技術的に検出できるPFASの下限値が『5ng/L』以上であり、『5ng/L未満』は『不検出』と記載している自治体もあります。私はその表記は適切ではなく、『5ng/L未満のため数値不明』とすべきだと考えます」 一覧表に掲載しなかった「5ng/L未満」の地点は200以上に及んだ。 国の暫定目標値を大きく上回ったのは、大阪府大阪市の232ng/Lと、兵庫県明石市の91 ng/L。ほかにも東京都や岐阜県、秋田県などで10 ng/Lを超過する地点があった。 青木医師が指摘する。 「私は全国の各自治体が5ng/L未満を目指すべきだと考えます。米国ではPFASの一種であるPFOSとPFOAそれぞれの値を『4ng/L』とする基準を設けており、日本もそれに匹敵する厳格な基準とすべきだと思います」
活性炭付き浄水器
国が定める暫定目標値は現在、PFOSとPFOAの合計で「50 ng/L」だが、規制の厳格化に向けた動きもある。 現在の「暫定目標値」の位置付けは、発覚した自治体に対応を義務づけるものではないが、水道事業者などの対応を義務づける「水質基準」への格上げが、環境省で議論されていると朝日新聞が1面で報じた(10月22日付朝刊)。原田准教授はこう警鐘を鳴らす。 「PFASが水道水から検出される地域は、フッ素樹脂を扱う工場や基地周辺、産業廃棄物処分場の下流などが考えられ、今後も散発的に発覚する地域があるのではないかと考えています。一般市民ができる対策としては、PFASを吸収する活性炭付きの浄水器を取り付け、適切な頻度でカートリッジを交換すること。そのうえで、国は暫定目標値から水質基準への格上げや、現在の50 ng/Lよりも厳しい数値基準に見直すことも検討すべきでしょう」 “新たな公害”とも呼ばれるPFAS。国の対応を待つだけでなく、自らの対策も重要となる。 取材/上田千春、佐藤篤司、末並俊司、田村菜津季、橋本安彦 文/池田道大 撮影/太田真三 ※週刊ポスト2024年11月8・15日号