【万年青×サボテン】多肉ファンからも今注目を集める、古典園芸の世界。誰も見たことのなかった新境地を鉢合わせで探る
万年青専門店の4代目と、新進気鋭の多肉植物・サボテン栽培家が出会った! 万年青の歴史にも深い造形をもつ水野豊隆さん、海外の多肉コレクターからも注目を浴びる芳山比斗志さん。それぞれが自信の栽培株と、観賞用鉢を持ち寄り、意見を交わしながら、独自の感性で鉢合わせに挑戦。誰も見たことのなかった「カッコいい」を提案します。『趣味の園芸』2024年12月号の注目特集より、一部を抜粋してお届け。 みんなの万年青(おもと)の写真
多肉植物・サボテンファンから、今熱い視線が注がれる万年青(おもと)
葉の形や色、株姿など、1株ごとの強い個性に、徹底的にこだわりたい......。そんな植物の楽しみ方が広がっています。特に大きな流れになっているのが多肉植物・サボテンの世界。愛好家同士の交流も盛んです。 今、彼らの間で熱い視線が注がれているのが、日本の伝統園芸植物の万年青(おもと)です。万年青は江戸時代以来、盛んに育種が行われ、銘品と呼ばれる品種も多く受け継がれています。 葉の形、斑の入り方だけでなく、葉のひだや突起などが生み出す観賞ポイント(「葉芸(はげい)」と呼ぶ)も多彩。まさに、1株ごとに観賞の楽しみは尽きません。 万年青とサボテン、二人のプロフェッショナルが語り合い、それぞれの視点で植物がより引き立つ器(鉢)を組み合わせる「鉢合わせ」を行い、新しい楽しみ方を模索してみました。
やったことがない! 想定外に出会えるおもしろさ
芳山 これだけ多くの万年青鉢を手に取って見たのは初めてです。どれもカッコいいですね。以前、東京の六本木で開いた展示会で、古典園芸で使われる伝統的な黒鉢にサボテンを植えてディスプレイしたことがあります。訪れた方には想像以上に大好評で、伝統園芸植物の鉢とサボテンの鉢合わせに可能性を感じていたところでした。 水野 万年青をはじめとする古典園芸では、「黒鉢(くろばち)」あるいは「黒楽鉢(くろらくばち)」と呼ばれる、縁がある三本足の鉢がよく使われてきました。これに絵付けされたものが「錦鉢」で、特別な株を飾るときにこれに植え替え、床の間などに飾って観賞するのが普通でした。 芳山 錦鉢の絵柄はすべて手描きなんですね。 水野 鉢の成形から焼きつけまでできる職人さんは減りましたが、現在でも10名弱が制作を続けています。 芳山 サボテンの栽培は駄温鉢が主流。そうしたお話を聞くと、やはり万年青の歴史の厚みを感じますね。 水野 私たちもふだんは黒いプラスチック鉢で栽培して、展示会などで観賞するときに植え替えています。 芳山 サボテンは球形のものが多いので、鉢に収まるように植えつけるのが一般的です。その感覚で、この錦鉢にはこのサボテンが合うと思って仮置きしてみると、実際には合わないのが悩ましい。鉢を選ぶときの決まりはあるのでしょうか。 水野 万年青では、大きめに育った株をやや小さい鉢に植えつけて、葉がはみ出すぐらいにして、鉢と株で逆三角形をつくるのがよいとされています。 芳山 おもしろいですね。高さの違いもあって、万年青鉢の上に球形のサボテンを植えるだけでは、こぢんまりと収まってしまいます。この錦鉢に負けないんですから、じつは万年青は派手なんだなと思いました。サボテンでも草丈がやや高めのものや華やかさのあるもののほうが合いそうです。 水野 それに対して、今人気の多肉植物鉢は質感が豊か。デザインもシャープで都会的です。どの株が合うか、考えているだけでも楽しいですね。