「人任せやネガティブ思考が筋力低下に大きく関わっている」と専門家が警鐘!寝たきりを招く5つの習慣
厚生労働省が公開する「介護保険事業状況報告」(2020年)によると、施設に入所している「寝たきりの人」は300万人以上と年々増加し、世界でも類を見ない多さだという。寝たきりになる原因や習慣を、高齢者を見続けてきた専門家に理由を聞いた。 【画像】ネガティブ思考は筋力低下に大いに関りがある
教えてくれた人
角田亘さん/医学博士 国際医療福祉大学医学部教授。著書に『リハビリの名医が教える 寝たきりにならない最高の方法』(エクスナレッジ)ほか。
寝たきりになる4つの主な原因
「寝たきりになる原因は、主に『認知症』『転倒などによる骨折』『脳卒中』『加齢による筋力低下』の4つ。これらには5つの生活要因が大きくかかわっています」 そう指摘するのは、国際医療福祉大学医学部教授の角田亘さんだ。 【1】認知症 認知機能の低下により、やる気が起こらなくなる。体を動かそうという気持ちもなくなり、家に引きこもりがちになり、筋力が低下する原因に。 【2】筋力低下 筋肉量は加齢によっても減少するが、運動しない、外出しないなど筋肉を使わない生活をすると筋力低下が早く進む。余計に体が動かしづらくなる悪循環に陥りやすい。 【3】骨折 年齢とともに骨がもろくなり、転倒などで骨折しやすくなる。骨折すると体を動かせなくなり、筋力低下が一気に進み、寝たきり生活に突入することも珍しくはない。 【4】脳卒中 脳動脈が詰まる、破れるなどすると脳組織がダメージを受ける。脳卒中によりまひ、認知機能の低下が起こり、リハビリを行っても改善しない場合も。
寝たきりになりやすい5つの共通項目
「私は、長年にわたり、リハビリ医学の専門医として脳卒中や認知症などの患者を指導する中で、寝たきりになる人には共通項があることがわかってきました。それは、出不精、運動不足、食生活の乱れ、人任せ、ネガティブ思考の5つです。 最近の研究から、出不精は認知症の発症を高める要因になることがわかっており、発症すると活動量が減るため筋力低下が起こり、転倒や骨折にもつながりやすいとされています。運動不足と食生活の乱れは、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を発症する原因となり、これらが進行すると脳卒中を引き起こしかねません」(角田さん・以下同) 一見、人任せやネガティブ思考は、寝たきりと関係なさそうだが、実はこれらも筋力低下に大きくかかわっている。 「人任せは、本人の問題だけでなく、高齢者が自分でできることまで家族が代わりに行うなど過保護にしすぎることで活動量が減り、心身の衰えの原因になります。家事も人や機械に任せすぎると認知症の発症リスクが高くなると考えられています。ネガティブ思考は気分が落ち込むため、外に出るのもおっくうになり、人と接する機会が減ることで認知症になりやすいと考えられています」 寝たきりになりたくなければ、この5つの生活習慣をすぐに見直すことだ。 「これまで私が見てきた事例では、寝たきりになりにくい人は、外出好き、体をよく動かす、バランスのよい食事をする、自分で率先して何でもやる、ポジティブな性格の人が多い。特に活動的な人は寝たきりになりにくいと考えられます」 事故や病気に対する“即効薬”はないが、生活習慣を見直すことはすぐにできる。 寝たきりを招く5つの習慣【まとめ】 【1】出不精 【2】運動不足 【3】食生活の乱れ 【4】人任せ 【5】ネガティブ思考 取材・文/廉屋友美乃 ※女性セブン2024年12月5日号