「僕の考えているシティポップはもっと自由」――韓国人DJ兼プロデューサーのNight Tempoが築くボーダーレスな音楽の世界
日本では、「80年代から90年代までのおしゃれな音楽」とみなされることが多いシティポップ。音楽的なことを言えば、ソウルやファンクの要素が多い音楽を指すことが多い。しかし、Night Tempoは自身の「シティポップ」についてこう定義する。 「自分が好きなのはシティポップじゃなくて、80年代末頃から90年代頭までのいわゆるJ-POP。海外では、それを全部含めて『シティポップ』とか『J-POP』と呼んでいるんです」 2021年のNight Tempoのアルバム『Ladies In The City』には、野宮真貴、BONNIE PINK、山本彩、道重さゆみといった有名アーティストが参加。2022年の「FUJI ROCK FESTIVAL」に出演すると、入場規制がかかるほどの人気ぶりだった。SKE48のチームKⅡの楽曲プロデュースも手がけるなど、J-POPシーンでも活躍中だ。
それぞれのシティポップがあっていい
彼の言葉はストレートで忌憚(きたん)がない。日本でのシティポップをめぐる状況を、「ちょっと変な形」という。 「僕はいま、日本でシティポップ専門家って名乗っている人たちとまったく違う方向で、世界で流してもみんなが納得してくれる選曲を広めようと思います。日本では、何かわからなかったら、すぐにネットで検索して、それが真実だと思ってる方がすごく多いんですけど、それだけじゃないんですよね」 2019年3月、Night TempoはTwitterに動画を投稿した。彼がニューヨークのクラブでWinkの「淋しい熱帯魚」を流し、現地の人々が熱狂している映像だ。海外でJ-POPを流すとどういう反応が起きるのかを、Night Tempoは検証してきた。それゆえの矜持(きょうじ)を強く感じさせる。 「僕は日本の中でだけ活動している人でもないし、実際に海外の現場に行って、現場をちゃんと体験して自分で検証しています。日本の中での『シティポップ』は日本のシティポップで、海外で聴かれている『シティポップ』は海外のシティポップ、っていうのはあるので。どっちもシティポップ、J-POPだと思うんですけども、同じものにしないほうがいいと思います。日本で専門家の方が言うシティポップと、実際に海外で言われているシティポップは違うんです」