トヨタが出資、TSMC熊本工場が日本の産業界にもたらす大きな変化
地元産業界の期待 進出企業との連携、商機
熊本県産業界はTSMC進出を中心とした半導体関連産業の集積に大きな期待を寄せる。熊本県工業連合会会長を務める金剛(熊本市西区)の田中稔彦社長は、TSMC日本工場の第2工場の建設に際しJASMにトヨタが出資することに着目する。県内でも自動車関連製品を取り扱う企業は多く「自動運転技術など、半導体を活用した新産業で地元企業が強みを発揮できるのでは」と予想する。 金剛の主力製品は移動棚だが、23年9月に半導体製造装置向けの部品加工に乗り出した。培ってきた金属加工の技術を生かす。「アルミ素材にも挑戦しており、自社の新製品開発にもつながっている」と積極的な動きを見せる。 ただ実際に半導体関連の仕事を手がける地元企業への本格的な波及はこれからだ。半導体搬送装置の開発メーカーであるプレシード(熊本県嘉島町)の松本修一社長は、「経済効果を実感するまでには4―5年かかるのでは」と予測する。 TSMCの第1工場が稼働する24年末以降も、三菱電機が菊池市に建設するパワー半導体の新工場棟など、工場の新設や増資の計画は続く。プレシードはTSMCとの直接取引ではなく、新たに熊本県に進出する企業や周辺サプライヤーとの連携に商機を見る。 一方、人材確保の困難に拍車がかかることが地元企業の懸念材料だ。県内生産設備メーカーのトップは「県全体の活性化にはつながるだろうが、初任給の引き上げなど地元中小にはつらい面もある」とこぼす。地元の熊本大学などが半導体人材育成に力を入れているが、就活生の進路に地元企業が選ばれるための魅力向上や工夫が求められる。 人手不足に生産性向上で対応する動きもある。表面処理を手がけるオジックテクノロジーズ(熊本市西区)はアルマイト処理ラインの温度管理などでIoT(モノのインターネット)技術を活用する。金森元気社長は「技術習得にかかる時間を短縮できている」と話す。