自然環境保育認証が幼・保の質向上に寄与する訳 森や山、川、海などでの活動通じて創造性育てる
熊谷俊人知事も自然環境保育には前向きだった
一言で「質」といっても、さまざまな質がある。そうした中で、なぜ、自然環境保育が浮上したのか。そこが、いまひとつ理解できない。県庁なり子育て支援課の中で、質についての議論、検討がなされたということなのだろうか。 「特別に検討会みたいなものをつくったことはありません。業務の中で検討していくことです。自然環境保育についても、2021年度から他県の例なども視察したりと検討していました」 自然環境保育は、子育て支援課が検討していたものの1つだったという。それが実現したことになる。増田氏は、「1つは“知事の思い”もあったと思います。県の各課が検討して案として掲げたものを、最終的に決めるのは知事ですから」とも説明した。 千葉県の熊谷俊人知事は、2009年に千葉市長選で当選し、当時の全国最年少市長(31歳)、政令指定都市では歴代最年少市長として注目された。知事に当選したのは、2021年3月だった。 千葉県内の保育関係者にも、自然環境保育認証制度が設けられた経緯について聞いてみた。 「熊谷知事は、市長時代にも、そして知事選のときにも自然環境保育には前向きな発言をしていました。そして、保育関係者の働きかけもあって、知事は検討会議の設置を決めました」 その検討会議である「千葉県自然環境保育認証制度検討会議」が最初に開かれたのは2022年8月で、以後全3回の会議を経て、制度はスタートすることになった。2023年の夏ごろから募集が行われ、申請して認証を得たのは2023年11月1日現在で計76団体である。 「初年度で、ここまでの応募があるとは思っていませんでした。想定以上の応募でした。事前に私たちが把握していた自然環境保育に取り組んでいる団体数は20前後だったからです」と増田氏。
畑をつくる、植物を育てるなども自然環境保育の認証対象
県として把握しきれていなかった、というわけでもない。申請は、自然環境保育に取り組んでいる実態がなければならない。ただし、その取り組みの解釈は幅が広い。 「認証の条件としては、必ずしも森の中や里山、海での活動と限定しているわけではありません。園庭のない施設も園外の公園を利用するとか、園庭に畑をつくるとか、プランターを利用して植物を育てることで自然環境とふれあうことができます。そうした工夫での自然環境保育も、認証の対象にしています」 千葉県ならではの制度の特徴といえる。千葉県は自然豊かな地域もあれば、自然のない都市部もある。認証の条件を里山での活動と限定してしまうと、遠くの里山まで足を伸ばさなくてはならない施設も出てくるし、それも難しい都市部の施設は制度から排除されてしまうことになってしまう。それを避けるために、自然環境保育の幅を広げているのだ。 「それによって、ちょっと工夫すれば認証対象になると判断した施設も多かったと思います。それが、私たちの想定以上に申請が多かった理由だと考えています」と、増田氏。 そして、「自然環境保育は豊かな自然環境がないとできないと思いがちですが、発想を変えて工夫すればできます。そういう工夫をしていただくことが大事だと考えています」と続けた。 さらに、なぜ自然環境保育の幅を広げたのかを聞いてみた。 「自然環境保育は『質』の面で期待できますが、自然環境が豊かでないとできない発想では、保護者にとって選択の余地が狭まります」 わが子のために自然環境保育を選択しようと思っても、都市部に住んでいるためにあきらめている人もいるはずである。自然が豊かな千葉県南部に引っ越せば実現できる可能性はあるが、仕事のことなど考えれば簡単ではない。 「県が支援することで都市部でも自然環境保育が実施できれば、保護者が施設を選ぶときの選択肢が広がります。自然環境保育が広まれば、子どもたちの成長にも、きっとプラスになります。一部の地域のためだけでなく、全県にプラスになるように考えるのが県の役目だと考えています」と、増田氏。