ノボの肥満症治療薬「ウゴービ」、本国デンマークで処方制限勧告
(ブルームバーグ): デンマーク保健省傘下の医薬品監督パネルは、同国の製薬会社ノボ・ノルディスクが販売し大ヒットしている肥満症治療薬「ウゴービ」の処方を制限するよう医師に勧告した。同薬は非常に高価で、心臓発作や脳卒中などの重篤な心臓疾患を1回予防するのに約87万ドル(約1億3700万円)のコストがかかると指摘した。
同パネルは6月6日に公表した報告書でウゴービについて、医師の第1選択肢にすべきではなく、この治療を開始するのは「少数の」患者に限るべきだとした。同パネルは影響力を持つが、医師には助言を軽視できる余地がある。
ノボの本拠地であるデンマークは、ウゴービが減量や関連する多くの病気にインパクトがあるもかかわらず、同薬のコストを巡り専門家から反発の声が上がる地域の一つ。米国では、ミシガン州最大の医療保険会社が12日、同薬の保険適用を来年1月から取りやめると発表した。
同薬は減量には効果的だが、患者の筋肉量が減る上、薬を止めた場合の長期的影響に関するデータがほとんどないとデンマークの医薬品監督パネルは警告した。
ウゴービで治療を受けているデンマーク人は記録的数に上る。2022年から販売されている同薬は人口600万人のデンマークで現在、約8万人が使用。同薬のコストはデンマークでは1カ月当たり約340ドル。米国では定価で1カ月約1350ドル。
ウゴービが体重減少だけでなく、心臓病や肥満に関連する他の病気にも影響を与えることは、保険適用の必要性を訴えるノボの主張の核心部分だ。
不確実な効果
デンマークでは、ほとんどの患者が自己負担しており、公的保険が適用されるのは重篤なケースのみだが、それでも保健当局は費用と効果が見合っていないと主張した。1回の心血管イベントを回避するためには、65人の心臓病患者を4年間治療する必要があり、1回の心臓発作を予防するための総費用は約600万クローネ(87万ドル)になると報告書は試算した。