家電や自動車に補助金 中国の“買い替え政策”その効果は【WBS】
18日、中国共産党の中長期的な経済政策を議論する重要会議「三中全会」の閉幕式が行われました。中国経済はデフレ懸念の台頭など前途多難ですが、AIやEV(電気自動車)などのハイテク分野でイノベーションを加速し、苦境を打破していくというメッセージが打ち出されました。 三中全会の公式声明には、ハイテク分野で「新しい質の生産力を発展させるメカニズムを整える」とし、「今回の決定を中国建国80年にあたる2029年に完成させる」と明記されています。 新たな成長分野の開拓の背景には、これまで中国経済を牽引してきた不動産市況の低迷があります。そうした中、今、特に深刻なのが個人消費の停滞です。6月の小売売上高の伸び率は前年比わずか2%のプラスにとどまり、コロナ明けからの1年半で最低の伸び率でした。 中国政府は消費を下支えするため、「以旧換新」という政策に力を入れています。これは、古い物を新しい物に買い替える消費を促す政策です。今年春頃から、中国各地では家電や自動車など様々な製品の買い替えに政府が補助金を出して消費のテコ入れを図っています。この政策の効果が現れているかどうかを取材しました。 北京市中心部にある家電量販店。 「店を入ったすぐの場所に、新しい製品に買い替えると最大で5000元を値引きすると書かれた広告が貼られています」(北京支局の杉原啓佑記者) 日本円で11万円もの大幅なディスカウント。店内にはいたるところに買い替え促進政策「以旧換新」の文字があります。中国政府はこれまでに約860億円(40億元)の買い替え補助金を支給し、低迷する消費の下支えに躍起になっています。店内には買い替えを検討する客が商談する姿がありました。 「この食洗機は(約17万円)だが、補助金を使えば6500元(約14万円)で買える。店全体の売り上げが確実に増えている」(店員) この店では、セール期間中の売り上げが1年前に比べて3割ほど増えたといいます。ただ、客からはこんな声も。 「最近、冷蔵庫を買い替えたが頻繁に買い替えるのは無理だ。政府の補助金は一時的で、長期的な解決策にはならない」(客) 政策の開始直後の4月、5月は家電の売り上げが伸びたものの、6月は一転マイナスに。丸紅中国の鈴木貴元経済研究チーム長は、買い替え政策は需要の先食いの側面があると指摘します。 「単年度では消費が少し盛り上がるのかもしれないが、こういうところで刺激をしても一部の需要の先食いになってしまい、来年以降むしろ耐久消費の伸びを低くするリスクもあるのではないか」(丸紅中国・鈴木貴元経済研究チーム長)