「部活を諦めるのが普通」子どもの交通難民解消へ 休眠預金を活用 佐世保・高島
島内に小学校までしかない長崎県佐世保市の高島(高島町)では、定期船の便数が少ないため、子どもたちの部活動や習い事の選択肢が制限されている。高島の持続的な活性などを目的に活動する「一般社団法人高島活性化コンベンション協会ESPO(エスポ)」は、休眠預金の助成を受け11月から定期船の便数を増やすなど、状況改善の道を模索している。 高島は同市相浦港から約7キロの場所にある離島で人口は約150人。男性島民のほとんどは漁師で自分の船を所有している。フェリーと旅客船の定期便があり、多くの島民が島と本土に1台ずつ車を持って生活している。 子どもたちの多くは島内の市立高島保育所、市立相浦小高島分校に進む。定期船を使っての通学は市立相浦中に通うようになってから始まる。 これまでの定期船の運航ダイヤでは、習い事や部活動をすることが難しく、部活動などをすると親が漁船で送迎することが多い。高校になると、ほとんどの学校は相浦港から遠く、部活動の終了時間も遅くなるため、部活動を諦める子どもが少なくないという。島民は「子どもたちはそれが普通と思っているのかも」と話す。 エスポは父親の出身地の高島で、水産加工工場を運営する「ACS」(岐阜県)の社長、重村友介さん(45)が中心となり昨年5月に発足、9月に法人化した。 重村さんが高島の高校生以下の子どもがいる世帯に課題を聞く中で「子どもの交通難民」の問題が浮上。ハンディキャップを解消しようと休眠預金の助成を受け、取り組みに着手した。旅客船の船長の協力を得てダイヤを変更、加えて週に3回増便して11月から新ダイヤでの運航を始めた。 中学生を含む3人の子をもつ高島町の自営業、木村静香さん(38)は「子どもの部活帰りなどにちょうど良い時間にしてもらい送迎の回数が減った。とても助かる」と話す。同町の漁師、武邉義樹さん(49)の息子は中学時は部活動をしていたが高校ではしていないといい、「今の運航ダイヤであれば別の選択があったかもしれない」と話す。 同取り組みは休眠預金の受給期間との関係で2026年1月まで続ける。その間、利用者らからのヒアリングを踏まえダイヤ変更をするなどして改善していく。来年度には保護者の送迎への一部補助も検討している。重村さんは「26年4月からは行政と協力してできたらと考えている。関係者の協力を得て見直しをしながら、適切な充実を図りたい」と話した。