OSK 翼和希「朝ドラ〈ブギウギ〉のオーディション。爪痕を残したいとバッチバチのスーツにリーゼントで臨んだ」
102年の歴史を持つOSK日本歌劇団(以下、OSK)。NHK連続テレビ小説『ブギウギ』の主人公のモデル・笠置シヅ子さんが所属していたことで、注目が集まっています。ドラマの中で主人公の歌劇団時代を描いた場面では、OSKの現役男役スター翼和希さんが出演。そのスマートな佇まいに人気沸騰中です。(構成=山田真理 撮影=岸隆子) 【写真】凛とした立ち姿、美しい流し目の翼さん * * * * * * * ◆男役になりたいと夢見るように 読者の皆様、初めまして!OSKの翼和希と申します。『ブギウギ』で主人公の歌劇団の先輩・橘アオイ役として出演した際には、「目力がすごい」などと話題にしていただいて(笑)、本当にありがたいことだと思っています。 何より嬉しいのは、ドラマをきっかけにOSKという劇団に興味を持ってくださる方が、まさに「急増」という勢いで増えていること。2023年11月の京都・南座でのレビューをはじめ、各地の公演ではたくさんのお客様にいらしていただいていますし、私が主演を務めるミュージカル『へぼ侍~西南戦争物語~』もなんと大阪公演は早々に完売。これって、10年在籍している私にもなかなか経験がない事態でございまして。(笑) 2月には同作品の東京公演があるのですが、東京で主演を務めるのは初めて。同月には浅草で歌をメインにしたコンサートも控え、皆様にお目にかかれる機会をワクワクドキドキして待っているところです。 生まれは、大阪の枚方(ひらかた)市です。今の私からは想像できないことに、子どもの頃は人前で何かするのは、恥ずかしくてようやらんタイプ。学芸会に出るのも嫌でしたし、体育の授業でダンスがあっても、友だちに見られるのは照れくさかったですね。 中学ではバレーボール部に入りました。もともと体を動かすのは好きだったので練習も楽しく、1回だけ北河内の選抜チームに選ばれて合同練習に行かせてもらったこともあります。
歌劇と出会ったのは、中学2年の時。姉が演劇部に所属していて、宝塚歌劇団のビデオを持って帰ってきたのです。忘れもしません、今も大好きな姿月(しづき)あさとさんの舞台。「ふわあ、なんてかっこいいんやろう」と衝撃を受けてしまって、自分もこの世界に行きたい、男役になりたいと夢見るようになりました。 最初の目標は宝塚音楽学校への入学です。その受験用のスクールに高校1年から通うというのは、かなり遅いほうと言えるでしょうね。歌も踊りも本格的に習うのは初めてでした。必死で練習に取り組みはしたものの、宝塚には結局ご縁がなくて。4回落ちてもうチャンスがないとわかった時には、ほんまにショックで落ち込みました。仕方なく普通に大学へ行こうと、受験もしていたのです。 そんな私に、通っていたスクールの先生が「OSKはどう?」と。大阪生まれにもかかわらず、OSKの舞台は未体験。その時初めて観たのが、大阪松竹座の『春のおどり』でした。歌劇の男役に抱いていた麗しく中性的なイメージに対し、OSKの男役さんたちは、まさに「漢」という文字が似合う爽やかな男前。 自分がスポーツに打ち込んでいたからかもしれませんが、芸術鑑賞というよりまるで試合観戦のよう(笑)。舞台と一緒に気持ちが高ぶり、観終わった後はどっと心地よい疲労感に包まれる。そんなエネルギーを感じる舞台だったのです。